スタチンによる糖尿病リスク

スタチンによる糖尿病リスク,従来報告を上回る46%の上昇
フィンランド・地域住民コホート研究
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1503/1503019.html



フィンランド・University of Eastern FinlandのHenna Cederberg氏らは,
同国の地域住民コホート研究METSIMから,スタチン療法を受けていた人では
受けていなかった人に比べて2型糖尿病を発症するリスクが46%上昇することが分かったと
Diabetologia(2015年3月4日オンライン版)で報告した。
また,このようなスタチン療法による2型糖尿病リスクの上昇には
インスリン感受性および分泌の低下が影響していることも示された。


◆WOSCOPSサブ解析ではリスク低下が示されるも,その後リスク上昇の報告相次ぐ
スタチンと糖尿病リスクの関連は,これまでにも数多くの研究で検討されてきた。
2001年に報告されたWOSCOPSサブ解析ではプラバスタチンにより同リスクが30%低下。
しかし,最近は同薬以外のスタチンに伴う2型糖尿病リスクの
わずかな上昇を示す報告が相次いでいた。


以前の研究で示されたスタチンによる糖尿病リスクの上昇度は9%
(13件の臨床試験データのプール解析)から22%(住民ベースの観察研究)まで幅があるが,
①対象が心血管疾患(CVD)の高リスク者で,
一般人口とは糖尿病リスクが異なる可能性がある
②糖尿病の有無を自己申告または空腹時血糖値に基づき判定しており,
糖尿病発症率が過小評価されている可能性がある−などの限界があった。


さらに,in vitroではスタチンによりインスリン分泌が低下したことが報告されているが,
ヒトでの検討は少ないなど,スタチン療法が糖尿病リスクを上昇させる機序は不明だ。
こうしたことを踏まえ,Cederberg氏らは今回の住民ベース研究で
スタチンと糖尿病リスクの関連について検討。
また,インスリン抵抗性とインスリン分泌の評価を行い,
スタチン療法が糖尿病リスクを上昇させる機序についても検討した。


◆8,749例の男性を5.9年間追跡
対象は,2005〜10年にMETSIMに登録された
フィンランド・クオピオ在住の非糖尿病患者8,749例(45〜73歳)。
平均年齢は57±7歳,BMI は平均26.8±3.8だった。2型糖尿病の診断は
空腹時血糖値≧7.0mmol/L,OGTT2時間値≧11.1mmol/LまたはHbA1c≧6.5%
②血糖降下薬の使用
③医療記録における2型糖尿病診断または①のデータあり−のいずれかの基準を満たした場合
とした。
ベースライン時にスタチンを使用していたのは2,142例(24.5%)で,スタチン使用者の
65.9%がシンバスタチン,
18.1%がアトルバスタチン,
8.6%がロスバスタチン,
3.8%がフルバスタチンを使用していた。


5.9年の追跡期間中に625例が2型糖尿病を発症。
非スタチン使用者に比べスタチン使用者では同発症率が高く
(5.8% vs. 11.2%,P<0.001),
調整後の2型糖尿病リスクが46%上昇していた
〔ハザード比(HR)1.46,95%CI 1.22〜1.74〕。
また,スタチンの種類別の解析では
2型糖尿病リスクの上昇はスタチンの用量依存性に認められた(図)。


◆スタチンによるインスリン感受性とインスリン分泌の低下が影響か
スタチンの種類別の解析では,
シンバスタチンとアトルバスタチンの使用は2型糖尿病リスク上昇と有意に関連していた
〔調整後のHRはそれぞれ1.49(95%CI 1.22〜1.83),1.21(同1.04〜1.40)〕。
さらに,こうしたリスク上昇は用量依存性に認められた。


さらに,スタチン療法は追跡期間におけるOGTT2時間値や
空腹時血糖値の有意な上昇と関連していた(それぞれP=0.001,P=0.037)。
一方,スタチン使用者では非使用者に比べインスリン感受性が24%,
インスリン分泌が12%低下していた(それぞれP<0.001,P<0.01)。


以上を踏まえ,Cederberg氏らは
「スタチン療法による2型糖尿病リスクは,交絡因子で調整後も46%上昇しており,
これまでに報告されていたよりも高いことが示唆された」と結論付けている。
また,その機序については
「スタチンがインスリン感受性とインスリン分泌を低下させることが,
スタチン使用に伴う2型糖尿病リスクの上昇に直接影響している可能性が高い」と考察。
ただし,今回の結果について,研究規模の大きさから「信頼性は高い」とする一方で,
対象者が白人男性のみであったため
女性や他の人種にも一般化できるわけではないと述べている。