マザーズ  10年ルール

マザーズ開設15年、代謝する市場へ
活況の裏側に停滞、「10年ルール」退場・移籍促す
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGD2101T_Q4A121C1EA1000/


ミクシィ、サイバーダインなどが人気を集め、
新興企業向け株式市場の東証マザーズがかつてない活況だ。
だが、よくよく見ると、にぎわっているのは上場する約200社のうち一握りで、
中には利益や株価がさえない古株の企業も多い。
「赤字でも上場できる」を売り物に発足し、今月で開設15年。
節目の年、東証は新陳代謝を促すべく改革に乗り出した。


◆上場市場を選択
日銀の追加緩和後で相場が大きく動いた4日、
不動産サービスのエリアクエストがマザーズから東証2部に移った。
初日の株価は1円高で終わったが、むしろ目を引いたのは
先月出した開示資料の中の「上場市場の選択」という文言だった。


これは東証が3年前に設けた制度に基づく。
上場から10年たった企業に対して、
時価総額が10億円未満なら上場廃止
10億円以上なら東証2部への移籍を促す内容だ。


マザーズ上場継続も選べるが、
その場合、時価総額が40億円に満たないと
「成長性がある」という確認書を主幹事証券からもらう必要がある。
プロ球団のベテラン選手が、
成績がパッとしなくなって退団や移籍を通告されるのに似ている。


制度の第1陣として、8月に
福祉用具レンタルの日本ケアサプライなど8社が東証2部に移った。
同社の今期の予想経常利益は
上場翌年の2005年1月期に記録した最高益の約3分の1、
時価総額は04年のピークの約8分の1にとどまる。
幹部は「成長への意欲がないと見なされたのだろう。仕方ない」と話す。


エリアクエストは03年の上場から最終赤字が5回。
お世辞にも成長株とは言いにくいが「市場変更は信用力の向上につながる」としている。
企業の受け止め方は様々だ。


マザーズ企業の中には、猛烈なスピードで東証1部に駆け上がるところもある。
かつてグリーはマザーズ上場から約1年半、
最近ではコロプラが約1年4カ月で東証1部に昇格した。


投資家の関心は、話題性があり、値動きが大きい銘柄に集中する。
市場全体の1〜10月の売買代金は28.5兆円と昨年1年間(27.8兆円)をすでに上回った。
そのうちミクシィ、サイバーダイン、エナリス
東証1部に移ったコロプラサイバーエージェントを加えた上位5社で4割強を占める。
時価総額ミクシィなど上位5社で3分の1以上だ。


活況と停滞の二極化が顕著になった背景には
1999年の開設時から市場の位置づけが曖昧だったことがある。


マザーズがもともと手本にしたのは
アップルやグーグルといった大型の成長企業がひしめく米ナスダックだった。
市場の規模ではニューヨーク証券取引所に及ばないものの、
互いに競い合う市場として存在する。


マザーズ東証1、2部と並列のはずだったが、同時に、
1部昇格を視野に入れた下位の市場というイメージを
自らつくり出してしまったのが戦略ミスとなった。
大型企業の上場はほとんどなく、上場基準を緩めて社数は増えたが質の低下が指摘され
06年のライブドア事件などもあって投資家の信頼を失った。


◆成長性で選別
そうした反省を踏まえたのが今回の改革だ。
一定の期間が経過したら東証1部に上がる、そのための登竜門
ステップアップ市場というコンセプトを改めて明確にした。
実情にあわせた看板の掛け替えといえる。


新たな企業がどんどん上場し、既存の上場企業は成長性でふるいにかけられる。
東証上場部の渡辺浩司課長は
「2〜3年後は、成長力がある企業だけが上場している姿を目指す」と話す。
東証2部は、1部昇格を視野に入れているが
マザーズほど成長スピードが速くない中堅企業が上場する市場、
という具合に色分けされる。


マザーズでは来年3月までに新たに20社程度が「10年ルール」の対象になる。
そして次の注目はジャスダック市場だろう。
上場10年という物差しでみれば全体の7割、約600社が該当する。
日本の新興市場に大きな転機が訪れる。