サンシシ 腸間膜静脈硬化症に関与

腸間膜静脈硬化症にサンシシ含む漢方薬の長期服用が関与
全国実態調査の結果から明らかに
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1411/1411005.html



JR大阪鉄道病院消化器内科部長の清水誠治氏は,
生薬の山梔子(サンシシ)を含む漢方薬の長期服用が
腸間膜静脈硬化症の発症に関与していることを,
第22回日本消化器関連学会週間のワークショップ
「希少消化管疾患の臨床像と問題点」で報告した。
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業
「腸管希少難病群の疫学,病態,診断,治療の相同性と相違性から見た包括的研究」
が行った全国実態調査から明らかになった。


◆9割近くが漢方薬を服薬
腸間膜静脈硬化症は,腸間膜静脈の線維性肥厚・石灰化によって起こる
比較的まれな虚血性の大腸疾患である。


今回の調査は,同疾患の発症要因(特に漢方薬の関与),
病像,経過,治療の現状を明らかにすることを目的に行われた。
昨年,1,400施設にアンケートを送付し,133施設から222症例の回答が寄せられた。


その結果,男女比は1:1.8と女性に多く,
年齢は26〜89歳(平均63.8歳),ピークは70代だった。
症状は,腹痛が最多で約半数(100例),そのほか下痢(38例),
イレウス,腹部膨満(各37例)と続いたが,無症状の症例も約4分の1に認められ,
診療上,注意を要する点として挙げられる。


今回の調査の焦点となった漢方薬服用に関する病歴の聴取は
222例中169例(76.1%)で行われており,147例(87.0%)で漢方薬の服用が確認された。
このうち,119例(81.0%)がサンシシを含む漢方薬を服用していたが,詳細不明,
サンシシが含まれない漢方薬も各14例あった。


生薬としてサンシシが含まれる漢方薬のうち,実際に服用されている漢方薬の種類は,
加味逍遥散37例,
黄連解毒湯36例,
辛夷清肺湯14例,
茵蔯蒿湯13例が多く,
服薬期間は3〜51年(平均13.6年)と長期に及び,
5年以上の服薬例が9割以上,10年以上が約7割を占めた。


◆服薬中止後の手術例はなし
内視鏡所見の特徴として挙げられるのは,色調異常(98.5%)の他,
浮腫,伸展不良,びらん,潰瘍も半数以上の症例で認められた。
部位は上行結腸では100%に所見を認め,下部に行くに従って低下していくことが分かった。


治療は,無治療が73例(33.0%),無治療からの漢方薬休薬が13例(5.9%),
漢方薬中止が73例(33.0%)などで,最終的に手術に至った症例は約2割だった。
サンシシを含む漢方薬の服薬者では半数以上の症例で漢方薬の中止が行われ,
服薬中止後の手術例は見られなかった。


清水氏は「腸間膜静脈硬化症が疑われる場合,漢方薬服薬の聴取を行い,
判明したら服薬中止の指示をすることで手術を回避でき,
緩徐ではあるが石灰化の改善が期待できる。
今後,漢方薬以外の発症要因の特定や,有効な内服治療などを検討していく必要がある」
と述べた。