C型肝炎の新薬、承認へ 「重い副作用少ない」

C型肝炎の新薬、承認へ 「重い副作用少ない」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11340588.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11340588



C型肝炎の新しいタイプの治療薬が、来年にも登場する見通しだ。
承認を受けるための臨床試験(治験)では、
インターフェロンを使う標準治療より効果が高かったとされる。
重い副作用も少ないとみられ、高齢者や肝硬変患者など
治療が困難だった人にも選択肢が広がる可能性がある。


◆治験者の9割が完治
新薬は飲み薬の「ソホスブビル」。
治りやすいとされる2型のC型肝炎ウイルスの感染者用が厚生労働省に承認申請され、
来春にも認められる見込みだ。


また、インターフェロンが効きにくい1型の感染者を対象に、
別のタイプの薬と組み合わせた治験も終了し、年内に承認申請される予定という。
日本では感染者の約7割が1型だ。


山梨県の女性(70)は昨年10月から今年1月まで、
県立中央病院で実施された1型の感染者向けの治験に参加した。
ソホスブビルとレジパスビルという薬を混ぜ合わせた錠剤を毎日1錠飲んだ。
3週間後、ウイルスが検出されなくなった。
服用は約3カ月で終わり、その後の検査でウイルスが体内から消えたことが確かめられた。
「副作用がないので驚きました」


感染を知ったのは約10年前。夫(70)の感染がわかり、自分も調べて判明した。
夫は2回のインターフェロン治療でウイルスをなくすことができた。
女性も2回受けたが、副作用とみられる全身の痛みやだるさに見舞われ、
どちらも途中で断念していた。


ソホスブビルの治験に加わった昨秋は、
肝硬変が進行し、肝がんになる恐れもある状態だった。
「ウイルスが消えて、先のことを考えられるようになり、明るくなりました」


治験を担当した県立中央病院の小俣政男理事長は
インターフェロン治療がうまくいかなかった患者も含め、
ほぼ全員でウイルスを排除できた」と話す。


公表されている治験データによると、
肝硬変の患者76人を含む341人のうち、338人が完治したとしている。
副作用の可能性がある症状は主に、鼻やのどの炎症、頭痛、だるさなどで、
重いものはなかったという。


インターフェロンなどの治療薬は重い副作用が出ることが多く、
高齢や肝硬変の患者は治療自体が難しいケースもある。
こうした患者も治療可能になることが期待されている。


ウイルスに直接働きかける薬は、
患者に使われている間にウイルスが変化して効かなくなる耐性が生じる問題がある。
ソホスブビルは、すでに米国などで使われているが、耐性の問題は出てきていないという。


◆薬の併用に残る課題
これまでC型肝炎の標準治療は、
改良型のインターフェロンの注射と飲み薬リバビリンの両方を約1年間続けることだった。
インターフェロンが効きにくい1型では完治する率は半分以下だった。


2011年、
ウイルスのたんぱく質を分解する酵素の働きを妨げるタイプの新薬
「プロテアーゼ阻害剤」が発売された。
標準治療に加えた3剤併用療法で治療成績が上がり、
期間も半年に短縮されたものの、腎障害など重い副作用が問題になった。
副作用が少ないものが13年に出て、治療の第一選択になっている。
ただし、肝硬変患者には使えない。


新薬のソホスブビルは、核酸誘導体と呼ばれる薬剤の一種。
ウイルスの遺伝子づくりを妨げ、増えられなくする。
エイズB型肝炎では同じ仕組みの薬が標準治療に使われている。
C型肝炎では、ソホスブビルが初めてとなる。


関西労災病院の林紀夫病院長はソホスブビルにも心配な点があると指摘する。
1型用は効果を高めるために、ソホスブビルだけでなく、
ウイルスのたんぱく質を攻撃するタイプのレジパスビルという薬も加えている。
林さんは「このタイプの薬は、耐性ウイルスを持つ患者が2〜3割いて、
そういう患者は効果が低くなる恐れがある」と説明。
この組み合わせとは別に、13年に発売された副作用の少ない
プロテアーゼ阻害剤との併用ができたほうがいいという。


しかし、製薬企業がそれぞれ異なり、
別の組み合わせの臨床試験は国内では取り組みにくい。
今後の課題となっている。