頭痛の時、授乳中のお母さんは何を飲んだら良いんだろう?

頭痛の時、授乳中のお母さんは何を飲んだら良いんだろう?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/matsumoto/201409/538087.html



NSAIDs、実は、母乳中移行が悪いことが知られています。
例えば、インドメタシンの蛋白結合率は90%以上あり
(蛋白結合していると細胞膜を通過できないので母乳中の移行が少ない)、
弱酸性でもあるので(血漿のpHは約7.4、母乳のpHは6.6〜7.0なので、
酸性薬物は血漿中でイオン化されやすく母乳中に移行しにくい)、
母乳中と血漿中の薬物濃度比(M/P比)は0.37と1を大きく切っており、
母乳中に移行しにくいことがわかります。
実際、乳児の体重や哺乳量も加味して計算する、
相対的乳児薬物摂取量(RID)は1.2%です。
つまり、お母さんが薬を服用しても
子どもはその約1/100の量しか暴露されないことになります。
「妊娠と授乳(南山堂)」を見ると、
ほとんどの抗炎症薬が授乳しても安全となっています。


また、日本ではよく使われ、OTCにもなっているロキソプロフェンナトリウム水和物は
ラットの乳汁中で検出されたので、添付文書では授乳中止となっています。
しかし、ヒトでは乳汁中に移行しないことが報告されています。
ロキソプロフェンを服用している授乳婦の方に、
むやみに「授乳中止」を指示するのは理にかなっていません


とは言え、膨大なレポートの中には有害事象も報告されています。
例えば、アスピリンでは、大量(2600mg/日)を内服している
授乳婦の母乳を飲んだ乳児に出血傾向がみられたという報告や、
代謝性アシドーシスを起こしたという報告があります。
また、小児にみられるライ症候群の誘因としても考えられているため、
薬物の胎児に対する影響をまとめた書籍であるDrugs in Pregnancy and Lactationでは
「Limited human data-potential toxicity」となっています。
前出のインドメタシンは母乳中の移行は少ないものの、
1例で出産後早期に授乳婦が服用したら乳児がけいれんを生じたことが報告されています。


これらのことを考えて、現在、
痛み止め飲んでいても授乳を止める必要はない事を伝えてあげています。
しかし、「どうしても心配だから一番安全なものは?」と言われれば、
小児の解熱鎮痛薬として第一選択薬になっているアセトアミノフェンや、
第二選択薬で、かつ極めて母乳移行の少ないイブプロフェンがお勧めとなると思います。


薬局で授乳中の薬の可否について調べるとき、LactMedがよく使われます。
LactMedはアメリ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)
の運営するウェブサイトで、新しい情報が専門家により検討され、
日々更新されている信頼できる情報源の一つです。
ちなみに、大分県内の薬局では大分県産婦人科医会、
大分県小児科医会および大分県薬剤師会からなる
大分県「母乳と薬剤」研究会が編纂した「母乳とくすりハンドブック(改訂版2013)」
が配布されています。当薬局でも、薬局で調べるときはこれを重宝しています。