ツムラ

ツムラレアアースの轍踏まぬ北海道戦略
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD2300I_23062014000000


一大産地である中国の需要増から原料生薬の価格が急騰。
第2のレアアースになりかねないとの指摘もある。


「2020年までに国内調達する原料生薬の半分を北海道で賄う」。
5月下旬、ツムラの加藤照和社長は北海道夕張市に飛んだ。
道内の生産農家から調達する原料生薬を1次加工する子会社、
夕張ツムラで工場拡張の地鎮祭に出席するためだ。
約18億円を投じ、延べ床面積およそ9400平方メートルの新棟を建設。
来年7月に完成させる計画だ。


北海道では、「抑肝散」の原料の川きゅう(せんきゅう)、
冷え性などの「当帰芍薬散」に配合する当帰(とうき)などを調達している。
新工場では生薬から異物を取り除き、乾燥させる工程などを自動化。
夕張ツムラの従業員は現在の約30人から倍増する。
国内初の本格的な1次加工工場と位置付ける。


工場だけではない。
滝川市では約150ヘクタールの道有地を借り受け、自社管理農場として栽培農家を募る。
北海道での栽培面積は現在約250ヘクタールだから、6割増える計算だ。
将来的には道内で1000ヘクタールまで増やし、
調達量を現在の約600トンから2000トンに引き上げるという。


ツムラは原料生薬の約8割を中国から輸入している。
国内の比率はわずか15%にすぎない。


その中国で原料生薬の価格上昇が止まらない。
ツムラによると、06年を100とした中国産生薬の購入価格が
今年は244と2.5倍近くに達する見通し。
円安の影響もあるが、所得増に伴う中国での需要増も見逃せない。
現地では投機マネーも入っているという。


一方、販売価格は薬価改定で下落傾向。
今期の連結営業利益は前期比19%減の182億円の見通しだ。
過去最高益の13年3月期(231億円)から2期連続の減益となる。増収は続くが、
「現状では売り上げが伸びるほど、原料生薬の調達懸念が強まる」(藤康範取締役)。
株価は年初から15%超下落。先月からの上昇相場に乗り切れていない。


何より、産地が中国に偏在するリスクはレアアースを想起させる。
同社は「農家への直接指導を通じた生薬栽培への貢献が認められており、
現時点で中国での調達に問題はない」と説明する。
ただ、国民の医療への関心が高まり、中国政府が国内需要を確保するため
レアアースのように輸出規制を敷く可能性もゼロではない。


北海道での栽培拡大は、こうしたリスクを少しでも軽減する狙いなのだ。
国内での調達比率が一気に3割、4割と高まるわけではないが、
だからといって無策ではいられない。
中国でも、農家に栽培指導しながら原則として相対取引で調達する自社管理農場を増やし、
原料生薬の囲い込みを進める。
国内外の管理農場からの調達比率を、
前期の4%から17年3月期に17%に引き上げる方針だ。