日本株変調の裏で進む新利回り革命

日本株変調の裏で進む新利回り革命
http://www.nikkei.com/markets/column/scramble.aspx?g=DGXNMSGD2800P_28012014000000&df=1


日本株は年明け以降、軟調に推移しているが、
相場が下がる局面でも配当利回りに着目した買いは着実に入っている。
今年からスタートした少額投資非課税制度(NISA)を通じ
「長期志向の個人マネーが配当水準の高い銘柄に向かっている」。
そんな解説が市場では聞かれる。





利回り志向の強さを示すのが、不動産投資信託(REIT)の底堅い動きだ。
受け渡しベースで2014年入りして最初の売買日となった12月26日を起点に、
日経平均東証REIT指数の動きを比べた。
12月26日終値と比べると、日経平均株価は1月28日で7%下げたのに対し、
REIT指数は2%高だ。


上場REITの予想分配金(株式の配当に相当)の平均利回りは3.7%台と、
東証1部の上場株式の予想配当利回りの平均1.7%台に比べ高い。
投資マネーが高い配当利回りを求める傾向が、2つの指数の動きの差につながった。


上場株式では利回りをみる際、
配当だけでは満足しない投資家が台頭しつつある点も見逃せない。
配当に自社株買いも加味した「株主への総配分利回り」への注目度が上がっている。


背景には、自己資本利益率(ROE)への関心の高まりがある。
もともとROEは外国人投資家が投資先を選択する上で最重要視する指標の1つだが、
資本効率の高さなどを基準に構成銘柄を選ぶ新しい株価指数
「JPX日経インデックス400」の算出が今年から始まったこともその理由とみられる。
日本企業は欧米企業に比べ余剰なキャッシュを多く抱え、
資本効率が悪くなりROEが低迷する一因になってきた。


ROEへの関心が市場で高まれば、
企業に対しキャッシュの有効活用を求める圧力が確実に増す。
ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジストのキャシー・松井氏は
「成熟企業では、増配や自社株買いによる株主リターンの押し上げを選択する可能性がある」
と指摘する。





実は日本でも、株主配分に前向きで総配分利回りが高い会社が登場してきている。
ゴールドマンの松井氏は昨年11月下旬に出したリポートで、
13年の配当と自社株買いの実績(10月末時点現在)をもとに、
総配分利回りの高い46社をリストアップした。


自社株買いに積極的なNTTは総配分利回りが10%を超えた。
大型買収の休止により資金に余裕ができたキリンホールディングスも、
昨年は約500億円の自社株買いを実施した。


総配分利回りが5%を超えたアサヒグループホールディングス
13年2月に公表した中期経営計画のなかで、株主配分を厚くする方針を明確にうたった。
「自己株式取得を含む総還元性向では50%以上をめどに、
総合的な株主還元の充実に努めていきます」。





ただ、こうした株主への利益配分に力を入れる上場会社は日本ではまだ少数派。
米国では、総配分利回りの向上を重要な経営課題と位置づける主力企業が珍しくない。


キャッシュを稼ぐ力のある米国の大企業は、
毎年のように配当を引き上げ、余剰キャッシュも積極的に自社株買いに回す。
石油大手のエクソンモービルや、
通信のAT&T、
日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など、
世界に通用するブランドを持つ優良企業たちだ。


マクドナルドはここ数年、
自社株買いと配当で計50億ドル以上を毎年、株主に配分してきた。
マクドナルドのドン・トンプソン最高経営責任者は23日の13年12月期決算の電話会見で
「配当と自社株買いを通じて長期にわたり、
フリーキャッシュフローのすべてを株主に還元していく」と語った。
「13年には配当と自社株買いで49億ドルを株主に還元した。
14年には約50億ドルを還元する」とも約束した。
マクドナルドはさらに、昨年9月に増配も発表した。
1976年に配当の支払いを始めて以来、毎年連続して増配している。


キャタピラーは27日の決算発表で、
今年1〜3月期中に約17億ドルの自社株を買う計画も公表した。
直近の株式時価総額ではじくと約3%の利回りに相当する自社株買いだ。
発表を受けキャタピラーの株価は27日に6%上昇した。