ロイコボリン

大腸癌患者に追加された葉酸製剤
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変


◆Question

48歳の男性。2カ月前に結腸癌を切除


手術後、最近になって、ようやく体力が回復し、仕事にも復帰できました。
ですが、再発がとても心配です。先生にもそう言うと、
「では、お薬を追加しましょう。
ただし、今日からは二つのお薬とも食事の前後1時間は避けて飲んでください」
と言われました。
追加された薬はどんな薬なのでしょうか。
また、飲み方が変わったのはなぜでしょうか。


≪処方せん≫
ユーエフティE顆粒 3g
ロイコボリン錠25mg 3錠
分3(起床直後、昼食2時間後、就寝前) 28日分


※前回まで、ユーエフティE顆粒(一般名:テガフール・ウラシル配合剤)が、
1日3g、分3、毎食後で処方されていた。

◆服薬指導

今回追加されたロイコボリンというお薬は、
それ自身癌細胞を攻撃する作用を持ってはいませんが、
ユーエフティと一緒に服用すると、
ユーエフティが癌細胞を攻撃する効果を高める働きをします。
ただし、正常の細胞にもダメージを与えることがありますので、
今まで以上に副作用には注意してください。
特に、1日4回以上の下痢や痛みのひどい口内炎
食欲が落ちて全身がだるくなるなどの症状が出た場合は、
薬を飲むのをやめてすぐに先生に連絡してください。
また、飲み方が変わったのは、二つのお薬を一緒に食後に飲むと、
食事の影響により効果が弱くなったり副作用が起きやすくなるからです。

◆解説

 大腸癌の標準的化学療法として従来、フルオロウラシル(5-FU、商品名:5-FUほか)による点滴治療が用いられてきたが、5-FUに葉酸製剤(一般名:ロイコボリンカルシウム)を併用することにより抗腫瘍効果が増強することが海外での臨床試験で報告されている。

 5-FUはその代謝産物であるFdUMPが腫瘍細胞のDNA合成酵素チミジンホスホリラーゼ(TS)と結合することによりTSを不活性化し、DNA合成を阻害するが、葉酸製剤にはFdUMPとTSの結合を促進する作用があることが認められている。

 さらに近年、葉酸製剤の経口剤(一般名:ホリナートカルシウム)が開発され、わが国で広く使われている5-FUのプロドラッグであるテガフール・ウラシル配合剤(商品名:ユーエフティ)との併用療法の治験が進められた。その結果、点滴治療と効果が同等で、しかも副作用が少ないことがわかった。

 一方、この併用療法の副作用として、貧血や下痢、口内炎、食欲不振、悪心、倦怠感などの臨床症状、赤血球減少、好中球減少、血小板減少、ALT上昇、総ビリルビン値上昇などの検査値の異常が高頻度に認められている。特に、重篤な下痢、劇症肝炎などの重篤な肝障害、重篤な骨髄抑制が起こることがあり、それらに関連した死亡例も報告されていることから、定期的に臨床検査を行うなど患者の状態を十分観察し、副作用の早期発見に努めなければならない。激しい腹痛や下痢(1日4回以上)、食欲不振を伴う倦怠感、黄疸(眼球黄染)の発現には十分な注意を促すべきである。

 また、この併用療法では食事の影響により効果が減弱したり副作用が起こる可能性がある。癌患者において空腹時および食後にテガフール・ウラシル配合剤とホリナートカルシウムを投与した試験では、空腹時に比べて食後投与時のウラシルのAUC、テガフールから変換された5-FUのAUCがそれぞれ66%、37%減少し、逆にホリナートカルシウムのAUCは61%上昇したことが報告されている。このため、食事の前後1時間を避けて服用するよう指導すべきだろう。