トキソプラズマ

妊娠中は生肉、生ハム避けて トキソプラズマに感染の恐れ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2013043002000141.html


妊婦は生肉や生ハムを食べない方がいい。
妊娠中に、生肉などについている寄生虫トキソプラズマ」に感染すると
胎児の発達が遅れたり、脳神経系に障害が出たりすることがあるからだ。
感染しても妊婦の症状自体は軽く、医師の危機意識が低いことも問題となっている。


東京都の歯科医師、智美さんは、
妊娠中に寄生虫トキソプラズマ」に感染した。
生後、長女(2つ)の感染も分かり、「先天性トキソプラズマ症」と診断された。
長女は右半身に軽いまひがある。


妊娠九カ月で胎児に異常が見つかった。
脳室が通常の二倍以上に拡大。母体の血液検査で感染が分かった。


トキソプラズマは哺乳類と鳥類に感染する単細胞の寄生虫
肉眼では見えない大きさで、卵はネコ科動物の腸管の中でのみ作られる。
感染したネコのフンに触ったり、土いじりしたりすることで、人に感染するとされる。
だが最近は、感染した動物の生肉を食べて感染する危険性が指摘されている。


岐阜県食肉衛生検査所の獣医師、松尾加代子さんが昨年調べたところ、
食肉用の牛の6・5%、豚の5・2%がトキソプラズマの抗体検査で陽性だった。


トキソプラズマは65度以上で加熱しなければ死なない。
表面が焼けた肉でも、中まで火が通らないと死滅していない危険性がある。
ただし、感染しても健康な人なら、自覚症状がないほど軽症。
日本人の二〜三割は感染し、抗体を持っているとされる。


怖いのは免疫力が低下しがちな妊娠中の感染だ。
胎盤から血液を介して母子感染する恐れがあり、流産や早産につながりかねない。
胎児の発育の遅れや、脳や目に障害が出ることもある。


渡辺さんは妊娠四カ月の時、焼き肉店で好物のユッケやレバ刺しを食べた。
その約二週間後にリンパ節が腫れたが、風邪だと思って病院に行かなかった。
長女の生後一カ月に、三井記念病院で母子の血液から感染時期を調べたところ、
生肉を食べた時期と一致した。
診察した産婦人科医で、トキソプラズマ研究の第一人者小島俊行さんによると、
リンパ節の腫れは感染後の典型的な症状。
渡辺さんは生肉を食べて感染した可能性が高いという。


小島さんの推計では、全国で年間約500人が妊娠中に感染している。
母子感染はそのうち三割で、障害児として生まれる子は十人程度。
出生時に異常がなくても、成長とともに視力障害が出るケースもある。
小島さんは「食の欧米化で生ハムなどが普及し、生肉への抵抗が薄れている。
妊婦が生肉を食べる危険性は知られておらず、感染者が増える可能性がある」
と懸念する。


◆低い産科医の危機意識
トキソプラズマ感染では、産婦人科医の危機意識の低さも問題となっている。
感染は血液の抗体検査で分かる。
千円程度の検査だが、全国の産婦人科の約半数では実施していない。
渡辺さんが妊婦健診を受けていた産婦人科も、検査を実施していなかった。