円安時代の備え

円安時代の備え、外貨建て投資で
フジマキ・ジャパン社長 藤巻健史
http://www.nikkei.com/money/features/32.aspx?g=DGXNMSFK2703O_27112012000000&n_cid=DSTPCS008



◆「無制限の金融緩和」は危険
――自民党安倍晋三総裁の金融政策発言の評価は。


「日銀が国債を大量保有することは、政府と日銀が共倒れになってしまう。
たとえ政府が倒れたとしても、日銀が中心になれば財政を再構築できる」


「際限なき量的緩和は危険だ。ハイパーインフレに向かう可能性がある。
日銀はゼロ金利政策量的緩和を行ない、最大限の政策を採っている。
欧米はリーマン・ショック後に始めたが
日本は2000年代初頭からすでに行なっており、これ以上やっても成果は期待薄だろう」


――もし新政権から日銀総裁または財務大臣を拝命したら。


「引き受けない。
今の財政状況ではクラッシュが避けられず、その当事者になってしまう。
貧乏くじを引くようなものだ。クラッシュ後の再建なら引き受ける。
その時は政治家のリーダーシップが重要になってくる」


◆円安でみんなに幸せになる
――「諸悪の根源は円高」と主張している。


「日本が市場原理を無視した社会主義国家だから円高が発生した。
円高がよくないという意識が日本人には薄かった」


「実力は1なのに通信簿で5がついている。
日本は輸出量しか考えていないが、内需もダメージを受けている。
沖縄県を例にあげると、観光産業のライバルは北海道だけでなく
旅費が安くなったハワイやグアムなど海外とも競合し苦戦を強いられている。
砂糖の輸入が増え、サトウキビ畑は減少している。
1ドル=240円から80円になれば、海外では3分の1のコストで人を雇え
国内製品の値段は上がることを意味する。国内産業は空洞化で仕事もなくなってしまう」


「『為替=値段』ということに気がついていない人が多い。
1997年に通貨危機で『地獄を見た』『あの国は終わった』と言われた韓国が
ウォン安で今の繁栄を築いたことを見れば分かるだろう」


――経常収支の赤字が定着したら円安の兆しが見えてくるか。


「経常赤字になるのは、長期金利の上昇か、円安か、その両方になる。
赤字にならなくてもその兆候が現れれば円安に向くだろう」


「日本の実力は1ドル=180〜200円くらい。
1ドル=180円で換算すると、トヨタ自動車の利益は世界最高水準になる。
日本企業の収益がグローバルスタンダードになれば、法人税収で70兆円入り
財政黒字となる。円安でみんなに幸せになる」


――日本の国債は大丈夫か。


「建設的な円安による経済回復は時間切れだ。
貸し手に貸すお金がないと借金はできない。
1999年に1400兆円あった個人の金融資産は十数年間で88兆円しか増えていない。
毎年44兆円も赤字国債が買えたのは、戻ってきた貸出金で
金融機関が国債を買っているから。これはバランスシートの調整でしかない。
景気が悪く個人資産が増えていない以上、どこかの段階で国債が売り切れなくなる」


国債バブル破裂の危険性
――今後の円相場の見通しは。


「円相場は国債価格と連動している。
2013年は、ほどんど動かないか、円と国債が暴落するかどちらかになるだろう。
動くときは極端に動く。財政赤字は積みあがっており
いつ限界点に達して破裂するかは分からないが破裂した時は大きい」


「日々、破綻に近づいている。今の日本国債はものすごいバブルの状態だ。
国内総生産(GDP)が10年間増加していない国に
これほどのお金が滞留するのはおかしな状況だ。
1980年代に起きた株式や不動産バブルに似ている。
今回は国債バブルと円バブルが弾けると考えている」


――庶民はどう備えればよいか。


「壊滅的ダメージを受けるのは我々、高齢者層だ。
ためてきた資産の価値が実質的になくなり
頼りにしている年金もハイパーインフレで実質的になきに等しくなるから」


「しかし若い人は違う。
幸か不幸か『ガラガラポン』が起きても失うべき財産をまだ持っていない。
年金の保険料もまだ払い込んでいない。
一時的に仕事を失うかもしれないが、その後の急激な円安で景気が回復し
すこしすれば仕事も出てくる。
ガラガラポン』の一番のメリットは、976兆円もの負債がなくなること。
我々の世代では決して返せない金額だ。
若者は英語を勉強したほうがいい。円高の今なら留学で海外にも行きやすい」


「我々、高齢者層にとっては自業自得だ。
ポピュリズム政治でバラマキを許し、借金をため込んだのは我々の責任だ。
そうはいっても、外貨建て投資で備えられる。火災保険に入る感覚と似ている。
たとえハイパーインフレになって貨幣価値が下がっても
80円で買ったドルを400円で売れば保険として備えられる」


――個人資産のポートフォリオは。


「個人金融資産に占める外貨資産の割合はもう少し高くてもいい。
初心者はドルを中心とした先進国通貨が向いている。銀行でも証券会社でも簡単に買える」


「ただ、ユーロには手をつけていない。
地域同一通貨は固定相場制。いつまでも続かないと思っている。
ユーロがひとつの国になるか、財政が1つになれば存続可能だが、でなければ崩壊すると見ている。
もしそうなっても、ユーロの価値はゼロにはならないが、どう分解されるかは分からない。」


「私は借金をして投資用ワンルームマンションを買っている。
国民と国の利害が対立した場合、国が勝つので国にならって借金をしている。
私の財産は不動産と借金。個人金融資産は90%以上が外貨で保有している。
30年以上為替の仕事をしているのでリスクを取る苦しさは理解している。
逆張りは普通の人にはできないだろう。
一般的には個人の外貨建て分散投資はまだまだ少ないと思う」