漢方薬Q&A

スズケン医療情報室 TOPIC SDIC Q&A No.117 2012年2月

Q1.漢方薬はなぜ食前または食間に服用するのですか?



漢方薬の中には配糖体と呼ばれる成分があり
腸内細菌がその糖部分をエサとしてとることによって
配糖体は腸から吸収され、薬効を示すようになります。
そのため、吸収部位である腸へ早く到達し、かつ
腸内細菌のおなかがすいている食前や食間が服用時点としてよいと言われています。


また、胃酸のpHによって
アルカロイドの吸収に差が生じることも理由のひとつとして挙げられます。
アルカロイドを含む漢方薬
食前の胃内pHが低い状態においてはイオン型(R-NH3+)となるため
水溶性が高まり消化管吸収が比較的抑制されるのに対し
食後の胃内pHが高い状況では分子型(R-NH2)となるため
脂溶性が高まり吸収が促進されます。


アルカロイドは強い生理活性をもつものが多いため
吸収が促進されると副作用が起こりやすくなる可能性があります。
すなわち、食前に服用することでアルカロイドの作用を軽減させることができます。
つまり、通常漢方薬は吸収を高めるために食前投与とされていますが
アルカロイドに限って言えば、吸収の促進を抑えるために食前投与が推奨されています。


※配糖体=甘草のグリチルリチン、大黄のセンノシドなど
アルカロイド=麻黄のエフェドリン、附子のアコニチンなど
※地黄、麻黄、石膏、当帰などを含む方剤(八味地黄丸、当帰芍薬散、麻杏甘石湯など)
は胃腸障害があり、食後服用が望ましい場合もある。

Q2.漢方エキス剤の効果的な服用方法は?



エキス剤は生薬から煎じた液を顆粒、細粒にしたものなので
そのまま服用しても差し支えないですが
できるだけお湯に溶かして服用する方が、よい効果が期待されると考えられています。
実際に吸収面で差が出るという報告もあり
独特の味や香りそのものが効果に影響を及ぼすことがあるためです。


葛根湯、安中散、八味地黄丸、五積散などは
温める方剤であることからお湯で服用する方がよいと言えます。
逆に小半夏加茯苓湯、黄連解毒湯、白虎加人参湯などは
熱や炎症を抑える方剤であることから、お湯に溶かした後に
いったん冷やして服用する方がよいと言えます。
(15〜21℃が適温と考えられています)
冷やして服用した場合、消化管吸収が早くなることもその理由です。