政府保有株売却案

復興財源に政府保有株売却案 株式市場の受け止めは プロの見方
http://www.nikkei.com/markets/kabu/market-focus.aspx?g=DGXNMSGD0800X_08092011000000


震災からの復興財源に充てるために
政府が保有する日本郵政やJTなどの株式を売却する案が浮上している。
国有財産の活用で増税による国民負担を軽減する狙いとされるが
株式市場には需給面などで警戒感も漂う。
市場関係者に受け止め方や影響などを聞いた。

「郵政株、売却手法や成長期待が需給悪化を左右」

大和総研主任研究員 土屋貴裕氏


JTは政府の保有株を自社株買いで引き受ける意向を表明しているため
株式相場の需給に与える影響は中立だ。問題は日本郵政株。
仮に政府保有株を売り出して上場するとなると、株式相場の需給に与える影響は大きい。
注目点は3つある。
まず一度に放出する株式の規模。
一度に数兆円単位で売り出すとなると、現在の株式市場では吸収できない可能性がある。
そのため、仮に売り出しとなった場合も数次に分割する必要があるだろう。
次に、会社の成長期待が高まるかどうか。
成長期待が高まり株価が上昇すれば、投資家にもほかの株式を買う余力が生まれ
需給の悪化を補うことが可能だ。
最後に、海外の株式相場の動向。
リーマン・ショック後、個人は投資の短期志向を強めた。
そのため、長期的な株式の保有を前提にすると、外国人の購入に頼らざるを得ない。
海外の株式相場が下落して外国人投資家に購入余力が乏しい状態での放出となると
需給バランスが崩れ適正価格での売却が困難になる可能性がある。

「個人が吸収、需給面で懸念少ない」

みずほ証券エクイティストラテジスト 瀬川剛氏


JTやNTTの株式の政府保有比率を下げても額はそれほど大きくないので
株式相場に与える影響は限定的だろう。
一方、日本郵政は巨大なので株式相場の需給の重荷となるという考え方もあるが
過去の大型上場の例をみる限り、その心配は要らない。
最も参考になるのは、1998年10月のNTTドコモの上場だろう。
正確には政府保有株の売却事例ではないが
当時は金融危機で株式相場を取り巻く環境が非常に悪いなか
2兆円規模の資金需要をまるまる吸収することができた。
たとえ相場の環境が悪くても、東京市場には兆円単位の資金需要を吸収する懐の深さがある。
日本郵政の収益性自体には疑問符がつくが、日本には1400兆円の個人金融資産がある。
特に資産のほとんどを預貯金に振り向けるなど保守的な資産運用をしている個人が
事実上の国の信用補完に期待して積極的に購入に動く可能性が高い。