グラケー

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇 6

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇 6


◆Question

72歳女性
この間から、グラケーが増えましたが
どうしても朝食後に飲むのを忘れてしまいます。
ベネットを起床時に飲むのは、ようやく慣れたのですが……。
朝の分だけ、グラケーとベネットを一緒に飲んではいけませんか。


《処方せん》
ベネット錠2.5mg 1錠
 1日1回 起床時服用 14日分
グラケーカプセル15mg 3カプセル
 1日3回 毎食後 14日分
※前回から、グラケーが追加された。

◆服薬指導

ベネットはお腹が空の状態で服用しないときちんと吸収されません。
そのため、起床時に飲んで、その後も30分ほどは朝食を控えていただくわけです。
グラケーは、逆に食事をした後に飲まないときちんと吸収されません。
こちらはビタミンKのお薬で、主に新しい骨を作る働きがありますが
食事をした後に十二指腸に分泌される胆汁という物質がないときちんと吸収できません。
どちらも、飲み方を間違えると、お薬の効果が数分の1にまで低下してしまいます。

◆解説

 ビスホスホネート製剤は、強力な骨吸収抑制作用により、高い骨量増加効果を示す。わが国でも、この点が高く評価されており、大規模臨床試験では骨折の予防効果も確認されている。

 一方、ビタミンK2製剤のメナテトレノンは、カルシウムの骨への定着に関与する蛋白質(オステオカルシンなど)を活性化することで、骨形成促進作用を発揮するが、併せて、破骨細胞の分化阻害などによる骨吸収抑制作用を有する。骨は、破骨細胞の働きで分解されつつ(骨吸収)、骨芽細胞により新しく再生される(骨形成)というサイクルを繰り返しており、このバランスが崩れると骨量減少が起こる。その点、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を併せ持つビタミンK2製剤は、骨量増加の目的では有用性が高いと考えられている。

 この2剤は、それぞれ単独でも使用されるが、骨量の減少が著しく、骨折のリスクが高い患者には、併用されることも多い。ビスホスホネート製剤による強力な骨吸収抑制に、ビタミンK2製剤の骨形成促進作用をプラスすることで、理論上、高い骨量増加効果が期待できるからである。

 ただし、ビスホスホネート製剤とビタミンK2製剤は、どちらも吸収が食事に強く影響される薬剤であることに注意を要する。しかも、服用時点がそれぞれ起床後空腹時と食後であるため、併用時は十分な説明が必要となる。

 ビスホスホネート製剤は、飲食物との併用でカルシウムやマグネシウムとキレートを形成し、吸収が低下する。実際、リセドロン酸ナトリウム投与後のAUC(血中濃度下推移下面積)を測定した試験では、絶食時投与に比べ、食前30分投与で2.7分の1、食後30分投与で16分の1にまで低下したことが報告されている。このため、ビスホスホネート製剤は、起床直後に服用することが定められている。

 逆にビタミンK2製剤では、食後に服用しないと十分に吸収されない。健康成人男性に経口投与した試験では、一晩絶食後に服用すると、朝食摂取後30分以内に服用した場合に比べ、AUCが6.8分の1に低下する。これは、ビタミンKが脂溶性ビタミンであり、その吸収には、食事(特に脂肪分)に反応にして分泌される胆汁が必要とされるからである。