ピロリ

除菌後のGERDは心配無用
ピロリ陰性化で酸分泌亢進も逆流症状は軽微
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201105/519702.html
 photo:BBC


ピロリ除菌後の胃酸分泌亢進による
胃食道逆流症(GERD)発症を危惧する声がある。
しかし、除菌とGERD発症リスクに有意な関連は認められず
GERD患者の自覚症状が除菌で改善するとの報告もある。


ピロリ除菌とGERDについては、1997年、ドイツの研究者が
除菌群のGERD発症リスクが高いと報告したことから注目を集めた。
しかしその後に行われた、ランダム化比較試験(RCT)では
GERD発症率に関して両群間に有意差は見られなかったとする報告が多い。


兵庫医大教授の三輪洋人氏は
「除菌によりGERDが増えたと指摘した最初の論文は
フォローアップ中に潰瘍を発症した患者を解析対象から除外していた。
研究デザイン上の問題があった」と指摘する。
さらに同氏は「現在、欧米では除菌は
GERD発症リスクとはならないというコンセンサスに至っている」と説明する。


北大教授の加藤元嗣氏は
「各施設からの報告によると、ピロリ除菌後のフォローアップで
新たに5〜10%の患者に食道の炎症が内視鏡的に認められ
うち20〜30%では胸焼けなどの症状が見られる」という。
ピロリ菌感染で胃酸分泌が抑制されている患者が多い日本人では
除菌で多少、逆流性食道炎(びらん性GERD)発症リスクが高まる可能性がありそうだ。


ただし加藤氏は、新たに発症した逆流性食道炎は軽症例がほとんどで
薬物療法を必要としない場合もあれば、必要な場合でもPPI投与でコントロール可能という。
「GERD患者を除菌すると、患者の自覚症状全般が改善する可能性がある」と話す。


三輪氏、加藤氏とも、除菌のメリットを考えれば
逆流性食道炎は除菌をためらう理由とはならないと断言する。
加えて、GERD患者へ除菌を行うことで、GERD症状の改善が示されることはあっても
難治化したという報告はなく、GERD患者のピロリ除菌を躊躇する必要もないと語る。
さらに三輪氏は、「GERDは進行性の疾患ではなく、食道癌の発症リスクには直結しない」という。


日本ヘリコバクター学会のガイドライン(09年改訂版)においても
逆流性食道炎の存在がピロリ除菌の妨げとはならない」
「除菌治療後に一時的に逆流性食道炎またはGERD症状が
出現または増悪することがあるが除菌治療の妨げにはならない」と明記されている。