バルプロ酸

笹嶋勝「クスリの鉄則」



バルプロ酸製剤(1)
デパケンRとセレニカRは何が違う?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201101/518170.html

薬物動態に関する特徴

(1)バルプロ酸の吸収はほぼ100%で、非常に吸収の良い薬剤です。
   蛋白結合率は90%以上なので、低アルブミン血症の場合は投与量に注意が必要です。

(2)年齢によって動態に違いがあります。成人に単剤投与した場合の半減期
   16時間ですが、12歳未満だと9.4〜16時間と短くなります。

(3)普通製剤は食事の影響を受けます。

(4)投与量を上げていくと血中濃度は上昇しますが
   ある濃度に達すると、それ以上は上昇しなくなります。

(5)バルプロ酸は、主にβ酸化で代謝されますが
   グルクロン酸抱合、CYPの影響も若干受けます。

普通製剤の特徴、徐放製剤との違い

バルプロ酸の普通製剤は
1日のうちの最低血中濃度と最高血中濃度の差が大きくなります。
普通製剤は、徐放製剤に比較して、食事の影響を受けやすくなります
Tmaxは、食後服用だと3.5時間程度ですが、空腹時投与では1時間程度と短くなります。

デパケンRとセレニカRの違い

バルプロ酸の徐放製剤は、食事の影響を受けないようにすること
吸湿性を解決すること、血中濃度の日内変動が大きくならないようにすること
などを目的に開発されています。


しかし、単純に「徐放製剤で血中濃度を安定化させれば、治療効果が高まる」
とは言えないとされており、普通製剤を使用し続ける例もあります。
徐放製剤に切り替えたことで、てんかん発作を起こした事例も報告されていますので
切り替え時にはしっかりモニタリングすることが大切です。


バルプロ酸の徐放製剤には、デパケンRとセレニカRの2種類があります。
どちらも先発医薬品ですが、体内動態が異なります。
デパケンRは9時間で80%が溶出するのに比べて、セレニカRは14時間で80%が溶出します。
このため、デパケンRは1日1〜2回分服、セレニカRは1日1回分服と、服用回数が異なります。


また、デパケンR錠は防湿効果があるので通常の一包化が可能ですが
セレニカR錠・顆粒は吸湿性があり、防湿をする必要があります。
実際、セレニカRの添付文書には
「本剤は徐放性製剤であり、製剤の吸湿により溶出が加速されることがあるので
吸湿しないように保存させること」との記載があります。
しかし、薬剤師がこの注意を知らず、グラシン紙(紙の薬包紙)で
セレニカRを一包化したために吸湿してしまった、という事例があります。


なお、どちらの製剤も、糞中に残渣が現れることがあります。
患者には「残渣が現れることがあるが、主要成分は吸収済みなので心配は要らない」
という旨を、事前に伝えておきましょう。