喘息の漢方治療

成人喘息の漢方治療について
東京女子医科大学東洋医学研究所講師 青山稲木クリニック院長 稲木一元先生


Question

成人の気管支喘息で、吸入ステロイド漢方薬を併用するとすれば
どんな漢方薬を用いればよいでしょうか。

Anser

1. 喘息の発作急性期には
青竜湯、麻杏甘石湯、五虎湯などの麻黄剤を中心に用います。
麻黄剤には気管支拡張作用および抗炎症作用があります。
ただし、麻黄のβ刺激作用およびNSAIDS様作用による副作用に配慮する必要があり
虚血性心疾患、高度腎障害などのある時には極めて慎重であるべきと思われます。


2. 咳感受性の亢進している、いわゆる“咳喘息”にはまず麦門冬湯を用います。


3. 非発作時には“体質改善”(気道炎症を改善して喘息の長期管理に貢献)
を目指して柴朴湯、小柴胡湯などの柴胡剤を用います。
胃腸虚弱者以外は、麻黄剤と併用されることが多いと思われます。
柴胡・麻黄・厚朴を含む神秘湯も考慮します。


4. 消化吸収機能の低下した虚弱者(虚証)では
補中益気湯などの補剤によって栄養状態改善と体力増強をはかります。
補剤を長期服用すると感冒をひきにくくなることが多く
感冒を契機とする喘息悪化を予防することができます。
また、補中益気湯十全大補湯などには免疫賦活作用があり
この面で有用な可能性もあります。


5. ときに、気道炎症を抑える他の漢方薬
清肺湯、滋陰至宝湯、滋陰降火湯など)の有用な例もあります。


6. 高齢者などでは、いわゆる腎虚に用いる八味地黄丸等の有用な例も時にあります。


7. 以上に加えて、青竜にI型アレルギー抑制作用
柴朴湯にI型およびIV型アレルギー抑制作用があることなども考慮されます。