ウテメリン


http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変

◆Question

21歳女性 妊娠26週目


このお薬は、おなかの張りを抑える作用があると先生から聞きましたが
飲んでしばらくすると心臓がドキドキします。
先生には「動悸がするかもしれないが、あまりひどくなければ心配は要らない」
と言われましたが、こんなにドキドキしてお腹の赤ちゃんに影響がないか心配です。
大丈夫でしょうか。


処方せん
ウテメリン(5mg) 3錠  分3 毎食後 14日分

◆服薬指導

ウテメリンを飲むと、脈が速くなって動悸が起きる場合があります。
ですが、お母さんに動悸が起きてもおなかの赤ちゃんに影響はありませんし
飲み続けていると動悸が弱くなることもわかっています。
お薬を飲んでから30分ほど、左を下にして横になっていると
動悸を弱めることができますので、お試しください。
ただし、1分間の脈拍数がいつもより30回以上多かったり
120回以上になるようでしたら、先生にご相談ください。

◆解説

塩酸リトドリン(ウテメリン)は切迫流・早産に適応を持つβ刺激剤である。
一般に、妊娠22週未満の自然中絶を流産、22〜37週未満の分娩を早産と呼び
それらの前兆症状が出現した状態を切迫流産および切迫早産と呼ぶ。
切迫流産では性器出血や下腹痛などが
切迫早産では下腹部緊満感(おなかの張り)や下腹痛などが出現する。


塩酸リトドリンは、子宮平滑筋に多く存在するβ2受容体への選択性が高く
子宮運動を抑制し流・早産を予防する。
注射剤と経口剤があるが、経口剤は主に軽症例に使用される。


ただし同剤では、服用後の動悸や頻脈などの副作用が問題になることがある。
同剤には、弱いながらもβ1刺激作用があり、心β1受容体を直接刺激して心機能亢進を起こす。
また、血管平滑筋のβ2受容体が刺激されることで血管が拡張して血圧が低下し
この血圧低下に対する反射性頻拍が起こっている可能性もある。


塩酸リトドリンによる動悸や頻脈は、服用後20〜30分程度で治まることが多く
また服用継続によりこれらの症状が弱まるのが一般的なので
さほど症状が強くなければ服用を続けるのが原則である。
胎児への影響については、点滴静注後に胎児心拍数が増加することが報告されているが
この心拍数増加は用量依存的ではなく、臨床上問題はないようである。


ただし母体の心拍数が過度に増加すると、心拍出量や1回拍出量の低下が起き
心不全や肺水腫などの重大な副作用を招く可能性があるため
点滴投与では、心拍数を120回/分以下もしくは心拍数増加を30回/分以下に
止めるように投与量を設定する方法が提唱されている。
また、左側臥位で点滴投与した方が、仰臥位での投与よりも
心拍数の増加が少ないことも報告されている。