http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変
◆Question
70歳 男性
5年前からパーキンソン病薬を服用している。
処方が変更されていたため確認すると、奥さんは次のような質問をしました。
手足が勝手に動く症状がひどくなってきたので、今回、先生から
「もう1種類薬を追加して様子を見ましょう」と言われました。
薬がまた増えるのは、病気がどんどん悪くなっているからでしょうか。
メネシット錠100 | 7錠 | 1日4回 | 2-2-2-1 | 14日分 |
カバサール錠1.0mg | 4錠 | 1日1回 | 朝食後 | 14日分 |
シンメトレル錠100mg | 3錠 | 1日3回 | 毎食後 | 14日分 |
リスパダール内用液1mg/mL | 1mL | 1日2回 | 朝夕食後 | 14日分 |
※今回からリスパダールが追加になった。
◆服薬指導
パーキンソン病のお薬を長い間飲み続けていると
半数以上の人に薬の副作用による、いろいろな症状が出てきます。
手足が勝手に動く症状は
メネシットを長い間服用された場合によく起こる症状です。
その症状を抑えるためにリスパダールが追加されました。
◆解説 レボドパの長期使用に伴うジスキネジアを抑えるため
パーキンソン病は
固縮
無動
安静時振戦
姿勢反射障害(体を押すとすぐにバランスを崩す)
を、四大症候とする原因不明の疾患である。
薬物療法はレボドパ製剤やドパミン作動剤を軸にアマンタジンや抗コリン剤などが使われる。
これらの薬物治療がいったん開始されると、ほぼ一生涯継続されるため
薬物の長期投与に伴う副作用や問題症状の発現を常にモニターし
適切な対策を講じていくことが重要となる。
中でも、レボドパ製剤の長期使用に伴う薬効減弱、薬効時間の短縮(Wearing off現象)
不随意運動(ジスキネジア)は半数以上の患者に発現するため、特に注意を払う必要がある。
奥さんが「手足が勝手に動く症状」と表現していることから
レボドパ誘発性のジスキネジアを起こしていると考えられる。
ジスキネジアは手や足、体などが自分の意思に関係なく勝手にくねくねと動く現象で
病初期からレボドパ製剤を過剰に服用し続けた場合に出現しやすい。
「パーキンソン病治療ガイドライン」によれば
ジスキネジアの対策として、まずレボドパ製剤の減量を行う。
減量が困難な場合には、1回量を減量して頻回投与を試みる。
パーキンソニズムが悪化した場合には、ドパミン作動剤の追加・増量を行う。
さらに、症状の改善がなく薬物の減量も困難な場合には
高用量の塩酸アマンタジンの追加を試みる。
それでも改善しない場合は、グラマリールやリスパダールの追加が有効とされている。
パーキンソン病の進行に伴うすくみ足にはレボドパ製剤の増量が
Wearing off現象にはモノアミン酸化酵素B阻害剤の追加が行われる。