ホルモン補充療法、乳がん発症が心配
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=28634
A. 短期間の服用なら心配なし
弘前大産婦人科教授 水沼英樹先生
症状をみると、典型的な更年期障害と思われます。
女性ホルモンは、このような症状に対して最も効果の高い薬なので
漢方薬で症状の軽減が見られないならば
ホルモン補充療法(HRT)をまず考慮すべきでしょう。
女性ホルモンのエストロゲンと、黄体ホルモンを補充する治療法です。
ところで、HRTが乳がん発症の危険が高まる可能性についてはよく話題になりますが
それが、どの程度の危険かは、あまり知られていません。
HRTが乳がんの危険性を高めたという研究結果で最も有名で
かつ信頼度が高いとされているのは、2002年に米国で報告されたWHI研究と言われるものです。
これによればHRTを受けたグループでは、受けなかったグループより
乳がんの危険性が26%高くなったと報告されました。
実際の発症数でみると、どうでしょうか?
HRTを受けなかったグループでは1年間に1万人当たり30名の乳がん発症があったのに対し
HRTを受けたグループでは38人、すなわち1万人あたり8人の増加が見られたにすぎません。
また、この8名の増加は投与開始後5年以上たって初めてみられたもので
それ以前では両グループの間で発症の差は全くありませんでした。
すなわち、HRTには乳がんのリスクがある、と認識しておいた方がよいですが
その程度は決して高いものではなく、リスクの増加には
投与期間が関係することがおわかりいただけると思います。
HRTと乳がんの関連については、まだまだはっきりしない部分がありますが
短期的な使用(おおむね5年以内)なら、まず心配する必要はないと考えます。
ただし、乳がんがあるのに、気づかずにHRTを始めると
それが急速に増大するおそれがあるので、安心して服用するためには
服用前はもちろん、服用中も、乳がんの検診を定期的に行うのが肝要です。
(2010年8月4日 読売新聞)
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