OAB × 漢方

ツムラ漢方スクエアより
過活動膀胱 ( over active bladder )

あきば伝統医学クリニック院長 秋葉 哲生先生
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/115/bestchoice.htm


猪苓湯 (40)

猪苓湯は尿路感染症に最も知られている漢方薬である.
5種の薬味からなり
猪苓,茯苓,沢瀉(タクシャ)はいずれも利水剤と呼ばれて尿利を促進し
滑石(カッセキ)は尿利と消炎作用を発揮する.
阿膠(アキョウ)は粘膜に潤いをつけて止血に働く.
茯苓は鎮静作用をも発揮するので,突発的な激しい尿意にも慌てずに対処することを可能にする.
本方は腹力やや弱からやや強まで幅広く適用される.
過活動膀胱患者で口渇を覚え易く,不眠傾向のある人ならばなおよい.

清心蓮子飲 (111) セイシンレンシイン

本方は,腹力がやや弱からやや強まで幅広い応用が可能な方剤である.
腹診すると心下痞を認めることが多い.

竜胆瀉肝湯 (76)

竜胆はリンドウの根で,炎症を鎮静し,驚き易い心を鎮静する作用をもつといわれている.
本方は腹力が中等度から強度までの方に用いられ
体力があって皮膚色が褐色から浅黒い人がよい適用であるといわれている.


五淋散 (56)

五淋とは各種の尿が出しぶる状態を指しているが
尿意切迫して頻回かつ少しずつ排尿することも包含する概念である.
本方は腹力がやや弱からやや強までの広い範囲に応用が可能である.


牛車腎気丸 (107) 八味地黄丸 (7)

高齢者の排尿障害には牛車腎気丸と八味地黄丸を忘れることはできない.
両者の相違は
八味地黄丸に活血化の牛膝と利水効果の車前子が加わったものが牛車腎気丸である.
冷えやむくみがある場合は牛車腎気丸,ない場合には八味地黄丸を用いればよい.

漢方薬による過活動膀胱治療の考え方

方剤名 投与上の注意 投与の目標となる症候
猪苓湯 腹力やや弱からやや強まで幅広く適用される 過活動膀胱患者で口渇を覚え易く,不眠傾向のある人に適用される
清心蓮子飲 腹力がやや弱からやや強まで幅広い応用が可能な方剤である 物事に過敏に反応する傾向があり,疲労倦怠を覚える過活動膀胱例に適用される.腹診で心下痞を認めることが多い
竜胆瀉肝湯 腹力が中等度から強度までの方に用いられる 体力があり,皮膚色が褐色から浅黒い人の過活動膀胱がよい適用である
五淋散 腹力がやや弱からやや強までの広い範囲に応用が可能である 過活動膀胱で尿が出しぶる傾向が強く,尿路疾患の標準薬といってもよい漢方薬である
牛車腎気丸および八味地黄丸 腹力中等度前後で幅広く用いられる 冷えとむくみが目立つようであれば牛車腎気丸で,それ以外は八味地黄丸がよい