エビスタ


http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変
 
 

◆Question

骨粗鬆症と診断され、2週間前から薬を始めた女性


前回もらったボナロンは飲み方が面倒でした。
先生にそう言うと、「では、薬を換えましょう」とおっしゃいました。
女性ホルモンの薬だそうですが、乳癌や子宮癌になりませんか?

処方せん

エビスタ錠60mg 1錠  1日1回 朝食後服用 14日分
アスパラ-CA錠200 6錠  1日3回 毎食後服用 14日分



◆Anser

エビスタというお薬は、女性ホルモンを補う骨粗鬆症治療薬です。
女性はエストロゲンが閉経後は作られなくなります。
エストロゲンが少なくなると、骨からカルシウム分が抜けて骨量が低下するのですが
エビスタを飲むことで、骨が弱くなるのを抑えることができます。


ご心配のように、これまでの女性ホルモン剤は骨だけでなく、子宮や乳房など
いろいろなところに作用するので、乳癌や子宮癌などが発生しやすいといわれていました。
ですが、このお薬は骨や血管に対してはエストロゲンの働きを強めますが
逆に子宮や乳房ではその働きを抑える方向に働くため、癌になる恐れは少ないといわれています。
ただし、静脈の血が固まりやすいという副作用があるので、下肢の疼痛やむくみ
息切れ、視力障害、胸痛などを感じたら、すぐお薬を中止して先生にお知らせください。

◆解説

エビスタ(一般名:塩酸ラロキシフェン)は
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)というカテゴリーに属する薬剤である。
SERMとは、各組織のエストロゲン受容体(ER)と結合した後
組織によってエストロゲン作用を示したり、抗エストロゲン作用を示したりする薬剤群のこと。
ラロキシフェンはERと結合後、骨に対しては骨吸収抑制作用を発現する一方
子宮や乳房に対しては、エストロゲン依存性腫瘍の増殖を抑える作用をもたらす。


欧米25カ国が参加し、閉経後骨粗鬆症患者7705人を対象に行われた大規模臨床試験
(MOREスタディ)では塩酸ラロキシフェンを3年間服用することで
腰椎の骨密度が3.2%増加し、新たな椎体骨折の発生が30〜50%低下した。
また、乳癌の発症率は同剤投与群で有意に低く
子宮内膜癌や心血管系疾患の発症率はプラセボ投与群と同等だった。


重大な副作用として、他のエストロゲン製剤と同様、静脈血栓塞栓症に注意する必要がある。
国内の治験では1例も報告されていないものの
MOREスタディでは塩酸ラロキシフェン60mgを3年間投与した群の1.0%に深部静脈血栓症
肺塞栓症、網膜静脈血栓症などの静脈血栓塞栓症が発現したことが報告されている。
下肢の疼痛・浮腫、突然の呼吸困難、息切れ、胸痛、急性の視力障害など
静脈血栓塞栓症の前駆症状は、常に念頭に置くべきだろう。