亜鉛投与では治らない味覚異常

亜鉛投与では治らない味覚異常
あきば伝統医学クリニック院長 秋葉 哲生先生
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/099/bestchoice.htm


処方例
1.小柴胡湯
小柴胡湯は少陽病の代表的処方である.
自覚症状として肩凝りや口苦を訴え
腹力中等度で胸脇苦満を伴うような症例に用いられる.
投与期間は少なくとも2週間は必要であろう.


2.半夏瀉心湯
味覚異常の第一選択薬は半夏瀉心湯
障害として苦味を覚える場合のみならず,様々な味覚異常に用いられる.
吃逆や噫気,呑酸が出やすいようであれば,一層本方の適応となる.


3.黄連湯
胸中に熱感があり,心窩部痛などの消化器症状がある味覚異常に適用される.


4.補中益気湯
平均的な体力の持ち主で味覚異常があり,やや疲れやすいという場合に適用になる.


5.白虎加人参湯
味覚異常があり,喉が渇いて冷水をたくさん飲むような人に適している.


6.大承気湯
便秘して腹満があり,味覚異常を伴う場合に適用となる.


7.桂枝加大黄湯
胃腸機能も平均かそれ以下で味覚異常があり,便秘もみられるような場合に適用となる.


既に耳鼻咽喉科を受診し薬剤性を含めて鑑別診断を経ていることとし
亜鉛の低下などが原因であるケースでは
十分量の亜鉛投与が行われている場合を想定して論を進める.


口中が苦く感じられるというのは少陽病の症候の1つである.
したがって適合する少陽病の薬方を投与すれば改善が期待されることになる.
少陽病はそのほかに,喉が渇く,腹診して胸脇苦満を認め
舌に白苔が付着しているなどの症候を認める場合が多い.
少陽病の代表的な処方は小柴胡湯半夏瀉心湯,黄連湯
さらに傷寒論処方ではないが補中益気湯などである.


さらに進んで味覚がほとんど失われる病期が陽明病である.
陽明病は典型的には腹部膨満や便秘があって
舌苔は厚くなり乾燥しているという特徴がある.
本病位の白虎加人参湯,大承気湯などはその適応条件が整えば
味覚改善の可能性があると思われる.
そして,多分便秘による鬱滞が熱を醸して味覚を損なうと考えれば
桂枝加薬大黄湯なども可能性を有するだろう.