アドナ

医師のための薬の時間

アドナの止血作用とアスピリンの抗血小板作用は拮抗するのか?

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/doctors/series/drug/imedis/200803/506067.html



60 歳の男性
<処方 1> 循環器科
バイアスピリン錠 (100 mg)1 錠 1 日 1 回
ワーファリン錠 (1 mg)4 錠 1 日 1 回
ほか


<処方 2> 眼科
アドナ錠 (30 mg)3 錠 1 日 3 回
ほか


バイアスピリン及びワーファリンなどの抗凝固薬を含む<処方 1>と
アドナを含む<処方 2>が併用されていたことを、併用開始から 10 ヶ月たった時に知った。 


アスピリンとカルバゾクロムスルホン酸Naの併用によって
両者の作用が互いに打ち消しあって効果が減弱される可能性は低いと考えられた。


また、ワルファリンとカルバゾクロムスルホン酸Naの相互作用に関しても
両薬剤の作用は互いに拮抗するものではなく
両者の効果が減弱される可能性は低いと考えられた。

アスピリンとカルバゾクロムスルホン酸Naの相互作用に関する考察

カルバゾクロムスルホン酸Naは細血管に作用して
血管透過性抑制作用、細血管抵抗性増強作用を有すること
血小板数、血液凝固系には影響を与えないことが認められているが
その薬理作用の詳細はまだ明らかになっていない。


一方、アスピリンの抗血小板作用は
血小板シクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害することによって
血小板トロンボキサン A2 (TXA2) の産生酵素を不可逆的に阻害することによる。


以上から、カルバゾクロムスルホン酸Naは血管を形成している血管内皮細胞に作用し
その透過性や抵抗性を変化させることで止血作用を示すと考えられる一方で
アスピリンは、血液中の血小板に作用して血液凝固を阻害する働きをもつ。


したがって、両薬物が作用する部位は異なっており
両剤の併用によってそれぞれの薬理作用が増強あるいは減弱する可能性は低いと考えられた。

ワルファリンとカルバゾクロムスルホン酸Naの相互作用に関する考察

ワルファリンの抗凝固および抗血栓効果は肝臓において
ビタミン K 依存性血液凝固因子の生合成を抑制する結果であり、アスピリンと同様
カルバゾクロムスルホン酸ナトリウムの薬理作用と拮抗するものではないと考えられる。

I.アスピリンと網膜症

網膜症が血小板の凝塊形成による毛細血管の閉塞に基づくものであるという仮説があり
アスピリンの抗血小板作用が網膜症に対して有効なのではないか
という見地から様々な試験が行われているが、統一した見解は得られていない。


1.軽度から重度の非増殖性糖尿病性網膜症患者
または初期の増殖性糖尿病性網膜症患者 3,711 名を対象に
アスピリン 650 mg/日*投与群、プラセボ投与群に分けて 3〜8 年調査した結果
両群で硝子体出血や網膜前出血の発症リスクに両群間で有意差は認められなかった。


2.外来の糖尿病患者 30 名を対象に
アスピリン1,000〜1,500 mg/日を約 11 ヶ月投与した群と非投与群に分け
糖尿病性網膜症に対するアスピリンの効果を調査した結果
増殖性糖尿病性網膜症患者 16 名中、アスピリン投与群の 8 名全てが変化なしであったのに対し
アスピリン非投与群 8 名中 6 名が不変、2 名が悪化していた。
また、非増殖性糖尿病性網膜症患者 14 名では
アスピリン投与群 7 名中 3 名が不変、4 名が改善したのに対し
非投与群では 7 名中 6 名が不変、1 名が悪化していた。
以上により、非増殖性糖尿病性網膜症ではアスピリンの併用が有効と考えられた。


3.糖尿病性網膜症患者 47 名を対象に
アスピリン (制酸緩衝剤との 2 層錠) 300〜600 mg/日投与群、他薬剤投与群
アスピリンと他剤併用群、無投与群に分け平均 4 年間調査した結果
網膜症の改善または増悪防止に対するアスピリンの有効性は認められなかった。


以上のように、糖尿病性網膜症に対するアスピリンの効果に関する統一した見解はなく
アスピリン服用の継続はそれぞれの医師の判断に委ねられていると考えられる。


心筋梗塞の再発防止に対するメタアナリシスの結果
アスピリンの至適用量は 75〜325 mg/日であり
より高用量のアスピリンがより有効であるという結果はなかった

II.ワルファリン等と網膜症

1.糖尿病性網膜症の 76 歳の女性。
十数年間ワルファリンを 2 mg /日で服用。
1 年前にインスリン非依存性糖尿病と診断され食事療法のみで治療を継続していたが
突然右眼の視覚を喪失。眼科検査では右眼に広汎な網膜出血が見られた。


2.インスリン非依存性糖尿病患者 37 名に対し
脳梗塞治療を目的とした抗血小板剤 (アルガトロバンなど)
または抗凝固剤 (ワルファリン、ヘパリンなど) 療法を行い
治療前後における網膜症への影響を検討した。
網膜症を有しない患者 17 名では
抗血小板ないし抗凝固療法施行後もとくに眼底に異常を認めなかった。
網膜症を有していた患者 20 名では、1 名で抗凝固療法施行中に硝子体出血を起こした。
それ以外の患者では眼底所見の悪化は認められなかった。
(症例ごとの使用量、使用期間は不明)。