頭痛

青山杵渕クリニック 院長 杵渕彰先生
ツムラ漢方スクエア「臨床医のための漢方Q&A」より

http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/063/qa.htm


Q.
頭痛の患者さんで西洋薬が使えない方がいます。
漢方治療ではどのような処方を使うのでしょうか
また頭痛に茱萸が効くと言われますが、どのような頭痛に効くのでしょうか。


A.
漢方治療の適応となるのは、慢性頭痛の殆どが適応と考えております。
群発頭痛は漢方治療では困難なことが多いのですが
緊張型頭痛、片頭痛では漢方治療を試みていただいてよいと思います。


漢方医学で、頭痛の分類は、急性・慢性と特に分けずに見てみますと


感染症などで起きる頭痛。
感冒などの時に見られる頭痛を含めます。 
昔は外邪性頭痛と表現しており、葛根湯などの感染症の初期に使う処方を使います。


② 過食、便秘などで頭痛があるもの。
これは、食毒性頭痛と呼ばれていたもので
大黄剤(大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯など)が使われております。
もっとも過食症の治療は別ですので、過食症の方の頭痛は抑肝散などの処方を用います。
この場合の過食は一時的なものと考えるべきでしょう。


③ のぼせによる頭痛。
気の上衝と呼んでいるもので、桂枝湯類(桂枝茯苓丸、桂枝人参湯など)を用います。


④ 憂鬱気分などに伴って起きる頭痛
気鬱によるものが多いと考えられ、緊張性頭痛が多いものと考えられます。
半夏厚朴湯などの気剤、柴胡剤(柴胡桂枝湯、四逆散など)などが用いられます。


⑤ 女性で月経周期に関連しておきる頭痛。
血性頭痛です。桂枝茯苓丸などの駆血剤を用います。


⑥水分の異常による頭痛。水毒性頭痛ですが
水毒のある方に、冷えやのぼせが関連して頭痛が起きると考えられます。
片頭痛の多くが水毒性頭痛に入ります。
冷えが関連しているときは、呉茱萸
口渇が強いものでは五苓散
めまいを伴う場合には苓桂朮甘湯などを用います。


⑦ 怒りっぽい人で、頭痛・頭重感がある場合には
癇証性頭痛と考えて抑肝散、釣藤散を用います。


片頭痛は、漢方医学的には、殆どが
水毒体質の方が冷え、のぼせなどをきっかけに起きる症状と考えてよいと思います。


茱萸湯は
水毒体質の方で、冷えをきっかけにして片頭痛を起こす場合に用いられる処方です。
片頭痛に伴う嘔気・嘔吐、下痢にも有効です。
茱萸湯は苦辛い味がして、飲みにくい処方ですが
嘔気には、この味が気持ちよく感じられることがあると言われます。
冷えは、自覚的にも訴えられることが多く、他覚的にも足先は冷えております。
頭痛があるときには項部の張りが強く、心下部(心窩部)の不快感を訴えられます。
心下部は他覚的に膨隆しているように見えることもあります。


また呉茱萸湯に近い処方に、当帰四逆加呉茱萸生姜湯があります。
この処方も片頭痛で用いることがあります。
より冷えが強く、冬は凍瘡になることもあるような方に使います。


茱萸湯は飲みにくい処方ですが、美味しいと感じられる方が居られます。
その場合には、頭痛がすぐにはとれなくても
暫く継続して服用して頂くと良いことが多いものです。
また呉茱萸湯は、鎮痛剤と考えることもできます。
月経痛、腹痛にも用いられます。


ごしゅゆとう