妊産婦 薬の選択肢広がる
免疫抑制剤3種、妊婦の禁忌から除外 国の研究機関で初
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO4131668015022019TCC000?unlock=1&s=0
Aさん(31)には
「全身性エリテマトーデス(SLE)」の持病がある。
「タクロリムス」を服用しながら妊娠、出産した。
産後も薬を飲みながら母乳で子供を育てている。
26歳のときに発症。
嘔吐や下痢、食欲不振などで日常生活を送ることも難しくなった。
医師の勧めでタクロリムスを毎日欠かさず飲むようになり症状は安定した。
子への影響配慮
結婚し妊娠を考え始めると、タクロリムスを飲み続けるかどうか迷った。
「妊娠と薬情報センター」村島温子センター長に相談すると、
タクロリムスの胎児への影響は小さいとの検証結果を知らされ、
「胎児への影響より母体の安定を優先して薬を飲む方が大切」との言葉を受けた。
さらに安心材料が続いた。厚生労働省は18年6月、
「タクロリムス」「アザチオプリン」「シクロスポリン」という3種の免疫抑制剤について、
それまで禁忌としていた妊婦への投与を認めることを決めた。
「妊娠と薬情報センター」は
国が2005年に国立成育医療研究センター内に設置し、
妊娠中に薬を使うことの女性の不安解消に役立つ情報の収集や、発信に取り組んでいる。
精神疾患でも悩み
精神疾患に関しても妊産婦の多くが薬の服用につい思い悩んでいる。
胎児などへの影響を避けようと妊産婦への向精神薬の処方をためらう医師が多いが、
向精神薬や睡眠薬を飲む方が利点が大きい場合もある。
「薬がなければ産後うつは決して改善しなかった」。
関東に住む30代女性は4年前に第1子を出産後、うつ状態になった。
精神科医に「授乳を続けるなら薬は出せない」と言われ、症状は悪化。
「死にたい」との考えが頭から離れなくなり、自殺未遂を起こした。
別の精神科で産後うつと診断された。
抗うつ剤や抗不安剤を飲み、症状が劇的に改善した。
女性は「一番大切なのは母親が心身ともに健康で笑顔でいること。
母親の病気を治すことを優先してほしい」と話す。
東京医科歯科大学の松島英介医師によると、
精神疾患を初めて発症する人の多くは15~45歳と、妊娠可能年齢に重なる。
この十数年で向精神薬に伴う性機能障害などの副作用が弱まったことや
精神的ケアの向上により、精神疾患のある女性の妊娠率は高まっている。