スリランカ駆け足旅

スリランカ駆け足旅
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旅の始まり

2001年4月28日(土)
福岡空港のX線検査で
バックパックの中のスプレー型殺虫剤(キンチョール)を発見され
凶器として機長預かりを宣告された。
それがきっかけとなり、バックパックの中身を全部、念入りに調べられることになる。
 

深夜、コロンボに到着

4月29日(日)午前1時過ぎ、バンコク経由でコロンボに到着。
両替をする。1Rs(スリランカルピー)=1,4円
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10ルピー札
 
出口は迎えの車でごった返している。
タクシーは交渉制、350Rs(500円)でOKしてタクシーに乗りこむ。
AM2時過ぎにホテルに無事到着。
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スリジャヤワルダナプラコッテの休日 より拝借 (許可をいただきました)
 

ダンブッラへ向かう

朝8:30
ランドリーサービスがしつこくドアをノックする音で起こされる。
 
行き先はダンブッラと定める。
ダンブッラまで140km。どんな道かはわからない。
 
ここからダンブッラへ行くには
バスでコロンボを経由して5時間
タクシーなら3~4時間で行けるという情報があった。
 
バスは座れるかどうかわからないし、恐らくエアコンはないだろう。
昨日は睡眠不足なので、体力的につらい。
 
道路へ出てタクシーを拾おうと思って
ホテルを出ると雨が降ってきたので、またホテルに戻る。
 
ホテルのツアーデスクで申し込むと、ダンブッラまで片道5000Rsだと言う。
交渉後4500Rs(6300円)。それ以上まけない。4500Rsは高いぜ・・
 
道路でタクシーと一台ずつ交渉しても良かったが
雨が降っているし、時間がもったいないので、結局OKする。
 
車はエアコン完備のトヨタの8人乗りのツアーバス
2列目の席の座席を倒して足を投げ出す。広い車を一人で占領する。
 
午前10時すぎ発車。雨がしとしと降っている。
エアコンから冷たい空気が出て
湿気を大量に含んだ空気を水蒸気にする。
 
ちょっと走って車は細い道に入り込んだ。
うわー、こんな道をずっと行くのかと思ったら
運転手(以下オッチャン)の家だった。
 
オッチャンの妹が日本語ができると言うので会わせられた。
オッチャンは僕が何日間旅行するのか
ダンブッラの後、どこに行きたいのか
どんなレベルのホテルがいいのか
などを細かく聞き出したかったみたいだ。
つまりずっと僕といっしょの旅をプランしようとしているのだ。
 
運転しながら、オッチャンはずっと契約の話を繰り返す。
しかし、いくら安くても僕は契約するつもりは無い。
鉄道やバスにも乗りたいし、スケジュールを決められるのも嫌だ。
 
曖昧な返事をしているとオッチャンは車を止めて真剣に交渉しだした。
断るといつまでも続きそうだから話を聞き、値段を出させる。
4日間の移動費として12500Rs(17500円)と出してきた。
よし、それでじっくり考えてみるから車を走らせてくれと頼む。
 
道路は予想に反して良く、快適だった。
金さえ出せばイージーに旅ができることがわかった。
 

ダンブッラの宿を決める

午後2時前。
宿は石窟寺院近くのダンブッラ・レストハウスに決める。
4時間弱で到着した。
 
ダンブッラレストハウスのテラスでビールを飲む。ビールはライオンビール。
以後ずっとお世話になったビールだ。オッチャンにはコーラをおごる。
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黒ビール(STOUT)もあるよ
 
じゃあね、オッチャンとはここでお別れだねと言う。
オッチャンは帰り道、カラで帰るのはつらいよ、と泣きを入れる。
帰りの分も料金に入ってるから、たくさんお金を払ったんじゃないかー
ダンブッラで誰か捕まえたらボロ儲けでっせー、と突き放す。
 
オッチャンは僕の予定しているシーギリヤに、今から
往復500Rsで行こうよ、と新たな提案をしてきた。
うーむ。シーギリヤはここから往復40kmの辺鄙なところだから
行っといたほうがいいかも・・
 
「よっしゃ。行きまひょ!」と、僕は車にまた乗りこむ。
「そう来なくっちゃ、だんな!」オッチャンは喜ぶ。
 

シーギリヤへ向かう

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入場料が1290Rs=15ドルもする。(外国人料金)
 
シーギリヤの大岩山を傘をさして登る。
中学生らしき遠足の団体がハローと笑顔をくれる。
「アーユボワン」とシンハラ語で答えると喜んでくれる。
 
高所恐怖症の人には無理そうな、狭いスパイラルを登って
有名なシーギリヤレイディ=世界遺産=を見る。
(岩の真中の黒くなったあたり)
 
番をしているオヤジがおまえの胸にさしている4色ペンをくれたら
シーギリヤレイディをフラッシュで撮っていいぜと言ってきた。
ボールペンを渡して写真を撮る。
(皆さんー、フラッシュは禁止ですよー!)
 
オヤジは毎日こうやって小銭を稼いでいるようだ。
更に4色ペンもう一本で絵葉書セットと交換。
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シーギリヤレイディ
 
大岩山の頂上に登る途中で土砂降りになって岩陰に入る。
そこで携帯灰皿を持って喫煙している日本人と遭遇。
(彼はポンチョを着ていたので以下、ポンチョ男)
 
ゴールデンウィークなのに日本人が少ないですねー。」と声をかける。
「私も3日目ですけど、初めて日本人と会いましたよ。」
ポンチョ男はキャンディからバスやトゥクトゥクを乗り継いで
遺跡を巡りながら、ここまで来たと言う。
ポンチョ男もダンブッラの宿なので、帰り道、車に乗せてあげる。
 
宿に戻る。
運転手のオッチャンは、ポンチョ男にも交渉したが断られ
悲しそうに帰って行った。
 

ポンチョ男の話を聞く

ポンチョ男は宿が近くだったので一緒にゴハンを食べる。
ポンチョ男の訪問国数は自称60カ国以上
昔、「歩き方」のレポーターを下請け会社でしたことがあるという。
 
遺跡の経済効果はすごいと言う話になる。
遺跡を見るためだけに、僕たち観光客はこんな辺鄙なところにやってくる。
道路も良くなって、宿も儲かり、遺跡の回りに村ができる。
バーミヤンの石仏(アフガニスタン)をぶっ壊した
タリバンは大アホだなー、などと言いいながら
うまいアラック(蒸留酒:原料はココナッツ)をしこたま飲んで酔っ払う。
 
今後の参考のため聞いたポンチョ男のお勧めポイントは
エローラ(インド)、イグアスの滝(南米)、シナイ山(中東)、サマルカンド(中央アジア
 
ポンチョ男は明日ポロンナルワ(世界遺産)に行くと言う。
僕はダンブッラの石窟寺院を見てからキャンディに行きますと言う。
 
ポンチョ男と別れてからポロンナルワが気になってきた。
蚊帳の中で「歩き方」を読んでみる。
うーむ、ポロンナルワは良さそうだ。どうしよっかなー。
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蚊帳です
 
いつのまにか寝てしまっていたが耳元で蚊のいやな音が聞こえた。
蚊帳の中に蚊が入りこみ、数カ所食われたことに気づいて
急いで蚊取り線香をたく。
 

ダンブッラの石窟寺院を見に行く

ジャングルの鳥の声で目が覚める。
午前7時過ぎ、石窟寺院(世界遺産)を見に行った。
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メインの涅槃仏は部屋の照明が暗くて良く見えなかったし
色あせていたので期待はずれだった。
それを機に、ポロンナルワにも興味が失せた。
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部屋で水シャワーを浴びてから、テラスで次の行き先を考える。
キャンディ手前のアルビハールの地獄絵図がある寺にする。
 

アルビハールの地獄絵図

8:30にホテルをチェックアウト
バス停でキャンディ行きバスを止める。
 
このバスはインターシティといってエアコン、音楽付き。
空いている席がなくなると後ろから補助席に座らせていく。
インターシティは案外速い。
 
車掌に行き先を告げ、70Rs(100円)払う。
座席は満員で、補助席に座らされる。すぐに次の人が前の補助席を倒して座る。
 
午前10時過ぎ、アルビハールに着いた。(1.5時間)
前の人に補助席を上げてもらい降りる。
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スリジャヤワルダナプラコッテの休日 より拝借 (承認済み)
別の写真と解説があります
 
アルビハールで地獄絵図をちょろっと見た後、トゥクトゥクを捕まえてマータレーへ行き
マータレーでキャンディ行きバスに乗り換える。(30Rs)
 
おんぼろバスは山道をのろのろ登っていくので遅い。
エアコン無し、ぎゅうぎゅう詰めのバスで立って行く。
 
スリランカ人はワキガ臭い!
暑い、ワキガの臭い、立ちっぱなしの三重苦だ。
 
でも、ツライ思い出は、いずれ楽しい思い出にかわるのだ。
 

キャンディ

午後1時、古都キャンディは大渋滞。喧騒の街だ。
山の上の静かなホテル、ティランカに決める。
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ホテルの近くに猿がいて近寄ろうとすると
学校がえりの子供に「危ないよ!」と注意されたのでやめる。
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トゥクトゥクでペラーデニヤ植物園に向かう。
「このー木何の木、気になる木」と同じ木(大ジャワビンロー)を見に行く。
CMの木はハワイにあるそうだ。
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ブッダの歯があるという仏歯寺を見終わって
ホテルでホットシャワーを浴びようとした時
大きなバスタブでツルーンと滑って蛇口でゴキッと左頬骨を強打した。
痛くてしばらく動けなかったが、折れてはいないようだ。
当たり所が悪ければ、そのまま死んでいたかもね。
 
バチがあたったのかな・・
そう言えば、今日行ったお寺で全然お祈りしなかったな。
これからは行く先々のお寺でお祈りしようっと。
 
ホテルでディナー。
インドでは禁断のビーフカリーを食べた。
肉は少し硬いが、悪くないよ。
 
スリランカの米はパサパサだが丸い。
タイやインドの米とは違う。
 

ヒッカドゥワへ向かう

5月1日(メイデイ)
早朝にホテルをチェックアウト
トゥクトゥクにのってバスターミナルへ向かうとき、仏歯寺が見える。
トゥクトゥクの運転手はハンドルを一瞬放して、合掌する。
 
「これに乗ればいい」 トゥクトゥクの運転手は
コロンボ行きのインターシティを教えてくれる。
コロンボまで85Rs
6:45発、インターシティはエアコンが効いて快適だ。
エアコンで冷やせば、スリランカ人のワキガは発生しにくいようだ。
人々はお寺の前を通るとき、さっと合掌する。
 
3時間後、コロンボに到着。
最初、ツアーバスで4500Rsかかった道程以上の距離を
250Rs弱で戻って来れた。かなりボラれたもんだね。
 
コロンボの巨大バスターミナルで「ヒッカドゥワ!(Hikkaduwa)」と叫ぶと
親切な人たちが、どこに乗り場があるか教えてくれる。
小型バスに乗り換える。ヒッカドゥワまで70Rs
 
窓側に座っている男はいろいろ喋りかけてくるが
小声なので何を言っているのか聞き取りにくい。
どうやら、日本に行って稼ぎたいから
いろいろ相談に乗ってくれ、と言っているようだ。
住所を教えて欲しいと言うので、デタラメのメールアドレスを渡す。
 
隣の補助席を倒して
お母さんと3~4歳の女の子が無理やり座ってきたので狭くなる。
女の子は僕の持っていた飲茶楼ヤムチャロウ)のペットボトルに興味を持つ。
飲茶楼に付いていたシールをはがして女の子にあげる。
女の子はよろこんで、そのシールを自分の小さな水筒に貼りつけた。
友達に自慢できるだろう。(んな、ワケないか)
 
12時半、ヒッカドゥワに到着(コロンボから3時間)
高級ホテル、コーラルガーデンにする。
オーシャンヴューで44ドル。
 
レストランでランチ、デヴィルドフィッシュにする。
悪魔のように辛い魚のカリーかと思っていたが違う。
辞書で調べてみると、devilとは悪魔のほかに
「肉を細かく切り刻んで、辛い薬味をかける」という意味があり
デヴィルドフィッシュはそれにタマネギとかトマトが入っていて
魚は輪切りで骨を取り除くのが面倒くさい。
デヴィルドポークなら中華の酢豚のようになるだろう。
 

ビーチを見に行く。

海水は少しにごっているが、これはなかなかいいビーチだよ。
東からの強い風がオンに入り気持ちいい。
潮溜まりには小魚や蟹がいっぱいいる。
 
ビーチ沿いの店でビールを飲む。
気持ちいいね。やっぱ海はいい!
海と冷たいビールがあればそれでいい。
そして、美女がいれば最高なんだけどね・・
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おじいちゃんが釣りをしています
 
ディナーもカリーだ。
「カリーボウル」という店にする。
カリー&ライスを選んで、具を決めて
HOTと言えば何でもうまくなることがわかってきた。
辛さは後から効いてくるが、ちょうどいい辛さだ。
ここは米が紫色だった。
 
ビーチ沿いのバーに移動し、アラックを飲む。
モンスーンで荒れたオフシーズンの海
最高のBGMじゃないか。
 
海はエナジーに満ち溢れている。
 
潮力発電とはどのような仕組みだろうか?
寄せる波と引く波をいかにして電力に変換するのか?
考えてみたが、僕にはアイデアが思いつかない。
 
さて、明日はどこへ行こうか・・
明日考えればいいのだ。
 

更に南下する

5月2日(水)
朝、セイロンティを飲みながら今日行くところを考える。
 
ヒッカドゥワ駅から鉄道で最終駅マータラ(スリランカ最南端)へ
時間があれば更にバスで東へ向かいタンガラに行くことにした。
 
午前9時すぎ、ヒッカドゥワ駅で駅員に
マータラ行きは何時か聞いてみると9:35だという。
ちょうどいいじゃないか。
 
「マータラへ何しに行くんだい?」と駅員。
「ビーチでんがな。」と僕。
「ビーチならウナワトゥナがスリランカでナンバーワンだ。そこに行け。」
「どうやって行くんでっか?」
「ゴール(Galle)で降りてトゥクトゥクでいけばいい。」
 
ほおー、スリランカでナンバーワンのビーチなのか・・
「歩き方」を見てみる。
確かにウナワトゥナはなかなか良いビーチのようだ。
じゃそこにしよう。
あっさり予定を変更して、ゴール(Galle)まで切符を買う。(11Rs)
 
「ウナワトゥナまでトゥクトゥクは300Rs。それ以上払うな。」
「ホテルはミルターがいい。」
「ゴールでお土産にセイロンティを買っていけ。安いから」
などと更に駅員は情報をくれる。
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コックとの出会い

ベンチで列車を待っていると、隣に座ってきた男が喋りかけてきた。
「俺は昨日おまえが泊まったホテルのコックだ。
今からウナワトゥナの家に帰るんだ。
ところで料理はどうだった?」
「うまかったよ。特に朝食のスプリングポッパーが気に入った。」
と答える。
「そうだろう、そうだろう。それは良かった。
ところでおまえさんはコロンボに行くのかい。」
「いいや、あんたと同じウナワトゥナだ。」
「ウナワトゥナのビーチはスリランカでナンバーワンだ。」
と駅員と同じことを言う。
 
ウナワトゥナのホテルはどこがいいのかと聞くと
「ミルターだ。」これも駅員と同じ答えだ。
ミルターは「歩き方」に載っていない。
新しいホテルなのだと察する。良さそうだ。
 
時間になっても列車は来ない。
遅れているとアナウンスがある。
 
コックとの喋りが続く
「ゴールには巨大な仏像がある。
おまえは日本人だから仏教徒だろう。
ホテルに行く前に見といたほうがいいよ。」
 
「ホテルを決めてから明日見るよ。」
「いや、明日(3日)はポヤデイ(満月)で休日だ。
今日、見といたほうがいいぞ。」
 
おや?・・今月のポヤデイは9日だと
オッチャンが言っていたぞ・・
こいつは臭いな。
 
臭いといえばこの男はワキガ臭い。
本当にコックか?
爪を見る。ちゃんと切っている。
 
しかし、この男、手ぶらだ。
勤務先から朝帰りなら、何か洗濯物などの荷物があるだろうよ。
 
僕は確認のためにバックパックからカメラを取り出して
「日本製のいいカメラで、写真を撮ってやるよ。」とそいつに言う。
詐欺師なら写真を嫌がるはずだ。
 
有無を言わさず、そいつの写真をパシッと撮る。
コックはここに送ってくれと、何故か”叔父さん”の名刺を出してきた。
「写真を送ってくれたら、きれいな切手を送り返すよ。」と言う。
 
うーむ。詐欺師じゃないかも・・
しかし、馴れ馴れしく近づいてくる奴は信じない。
これが旅の鉄則だ。
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リヤカーをひいた駅の作業員が話し掛けてくる
「日本人は99%が仏教徒なんだろ?」
「へえー、日本のことを良くご存知ですね!」 
と驚いてみせる。
 
「カラテもできるんだよね!」
「もちろんです!」と答える。
”押忍!(オス)”と言って型をキメる。
皆が喜んでいる。これでいいのだ。
 
”列車が来まっせー” と放送があり、駅に待っている人々が立ち上がる。
45分遅れでマータラ行きのオンボロ列車が到着した。
 
ビーチ側の席を探す。
コックは同じ所に座ろうよ、と言うが、この男はワキガ臭いので嫌だ。
4人席に1つ空きがあった。すばやくそこに座る。
 
エアコンはないが、やっぱ鉄道がいいね。
南国の海岸線の景色を楽しむ。
 
30分もすると次の駅で大勢の人が立ちあがる。
「ここがゴールだ。」
あら、たった一駅だったのね。
 

ゴール(Galle)駅に到着

明日のコロンボ行きの時刻表をメモする。
10:40 EXPRESS
11:40 EXPRESS
14:05 SLOW   
14:45 EXPRESS
 コックは僕が写し終わるまで待っている。
 
「駅前のトゥクトゥクはぼったくりだから
離れたところからトゥクトゥクに乗ったほうがいいよ。」
 
コックについて行く。
ポツンと離れたところに一台トゥクトゥクが止まっていた。
「これに乗ろう。」コックが言う。
 
乗りかけた時、トゥクトゥクの運転手が愛想良く握手を求めてきた。
なんか変だな・・
握手をしながらそう思う。
これまでトゥクトゥクの運転手から握手を求められた経験はない。
 
わかった
こいつらはグルだ。
 
即座に踵(きびす)を返して
通りがかりのトゥクトゥクを止める。
「ウナワトゥナのミルターホテル、いくらだ?」
「300Rs」
「よっしゃ!」
 
すばやくトゥクトゥクバックパックを放り込む。
さっきの運転手が駆け寄ってきて何か文句を言っている。
すぐにトゥクトゥクを走り出させる。
コックもあわてて乗りこんできた。
 
「おまえさんは俺を信用していないのか?」
「信用してねーよ。」と答える。
「俺は仏教徒だ。それにコックという職もある。
騙すわけがないだろう。信じろよ。」
信じろ(trust me)は詐欺師がよく使う言葉だぜ。
 
また、スコールだ。
11:30 ドシャ降りの中、ミルターホテルに着く。
 
おいおい、古くさいホテルだよ・・
ホテルはミルターじゃなくて、ミルトンだった。
ミルトンならミルトンとちゃんと発音しろー。
 
MILTON なんて HILTON のパロディだよ。
ミルトンとわかっていたら
サダル(カルカッタ)の安宿 HILSON と SHILTON を思い出して
話にはのらなかったぜ。
 
(ここで一枚ヒルソンホテルの写真が欲しいね・・・でも無い)
 
他にホテルは見当たらないし、ドシャ降りなのでここでいいか。
部屋を決めてバックパックを置いた。
 
コックは部屋の中に入ってくる。
「おまえさん、家に帰るんじゃなかったのか?」
早く出て行くように促す。
 
「ここでビールを頼むと高いから、俺が外で買ってきてやるよ。」
金を預かってトンズラしようっていう魂胆だな。
なかなか、シブトイじゃないか。
 
「僕は敬虔な仏教徒だ。酒は飲まないっ!」
ときっぱり言う。
「じゃあ、俺にビールをおごってくれよ。」
「おまえは仏教徒じゃなかったのかい?」
「ビールはいいんだよ。」
「家に帰るんだろ、家族が待ってるぞ。」
「・・・サヨナラ」
男は日本語でそう言い残して去って行った。
 
勝った。
もう少し巧妙な罠だったら、完璧に嵌(ハマ)っていたよ。
危なかったぜ・・
 
しかし、なかなか手が込んでるね。
駅員もグルだな。いや、ニセ駅員だろう。
 
こいつらは3人がかりで
いったい何を企んでいたのか・・
 

HOTEL MILTONS

ぬるいシャワーを浴びて
ライオンビールを飲む頃になると雨は上がった。
 
昼寝してからビーチに出る。
ここはなかなかいいよ。
波打ち際に小魚の群れが見える。
このホテルは「歩き方」に載っていないから投稿してやろう。
 
HOTEL MILTONS」 UNAWATUNA
メインビーチの東端にある隠れ家的ホテル。
プライベートビーチなので売り子が来なくて、静かに過ごせます。
ビーチの沖には岩場があり、波を防いでくれてビーチはいつも穏やか。
大きな結婚式場があって
1泊2日で私が行った時は2日とも結婚式を見ることができました。
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蚊取りマットも備え付けてありますが、蚊はいませんでした。
従業員は皆、笑顔で接してくれて楽しいホテルでした。
( 2001年5月 福岡市 りょうこ )
 
これでいい。掲載されるだろう。
古くさい、昼間でも部屋が暗い、鍵がオートロックではない
お湯がぬるい、プールはない、などということは書かない。
上の写真は送らない。
なぜならトタン屋根がみすぼらしいからだ。
 
しかし本当に、ここは完璧なプライベートビーチで
メインビーチに行くには一度、道路に出ないと行けないのが僕には邪魔くさい。
 
ウナワトゥナのメインビーチは本当に素晴らしい砂浜で
素足で歩くとすごく気持ちがいい。
間違いなくヒッカドゥワよりいいビーチだ。
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レストランを捜しながらビーチを歩くと
「歩き方」の地図の間違いを2ヵ所発見する。
よくあることだ。ズバリ指摘してやろう。
僕は「歩き方」を批判はするが
ちゃんと買っている愛読者なんだから、いいだろう?
 
「歩き方」に載っていないPeacock レストランにする。
ここが一番混んでいる。
ここではフィッシュカレー(100Rs)を頼むのが礼儀だろう。
うまい。
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夕方もここで夕焼けを見ながらエッグカリー(90Rs)にする。
カリーの中に、ゆで卵が2つ、おでんのように入っている。
これもうまい。
このレストランも投稿してやろう。
 
僕は「歩き方」の投稿マニアなのだ。
(イタリア、チェコオーストリアに掲載されています)
 

詐欺師の手口についての考察

さて、詐欺師たちの企みはどのようなものだったのか、推察してみる。
 
ニセ駅員の役割:
ゴールへ行くカモを探す。またはゴールへ行くことを勧める。
昨日、どこに泊まったかを確認してコックに伝える。
ゴールで観光や買い物をすることを勧める。
 
コックの役割:
たまたま同じ駅で降りるということを装い
親切な人だという安心感を植え付ける。
仲間のトゥクトゥクへ誘導する。
 
ここまでは間違い無いだろう。ここからは推測だ。
コックはトゥクトゥクでゴールを観光しようと言う。
①お寺やショッピングをしている間に、僕がバックパックから離れた隙を狙い
バックパックごとトゥクトゥクとともに逃走する。
②隙を見て、睡眠薬を飲み物やカリーに加え、眠らせて身ぐるみを剥がす。
トゥクトゥクで、どこか辺鄙なところへ拉致して、武器で脅す。
こんなところだろうか。
①は証拠写真を取ったからやりにくい。
②、③ならカメラを回収できる。
 
ただ、なぜ彼らがミルトンを勧めたのかがわからない。
単にミルトンホテルの客引きだったという可能性もある。
 

コロンボ行きに乗る

5月3日(木)
ウナワトゥナからゴール駅まで
トゥクトゥクの爺ちゃんの言い値はなんと100Rsだった。
(昨日は言い値で300Rs払った)
でも、ぼったのはコックではなく
通りががりのトゥクトゥクの運転手だからいいけど。
 
ゴール駅に着くと
「ウナワトゥナはよかっただろう?」と声がかかる。
 
あの”ニセ駅員”がいた。
今日はゴール駅で”商売”をしているのか?
 
「ああ、ウナワトゥナはとても良かったよ。
ありがとう。(話のネタを作ってくれて)」と僕は答える。
 
切符売り場で並んでいると、知らない男が話し掛けてきた。
「昨日ミルターに泊まったろう?俺はあそこのコックだ。」
「もおー、ええ加減にしなさい!」と(関西弁で)突っ込んであげる。
 

不正乗車が発覚、連行される

ゴール駅からコロンボまで2等車で64.5Rs(90円)
10:40発の列車が遅れて11:05に発車。海側の席を確保する。
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ずーっとビーチの景色が続く。海岸線ぎりぎりを走ることもある。
これはすばらしい線路だ!
 
パンやジュース、果物の売り子が入れ替わりでやってくる。
たまに乞食も現れる。
 
3等車はかなり混んでいるようだ。
人が入りきれずに2等車の入り口のところまで溢れてきている。
でも2等車には空席がある。
 
3等車の運賃は2等車の半額。
ゴール駅からコロンボまでだと、その差は約30Rs(42円)
この30Rsの差がけっこう大きいということだね。
日本で言えば新幹線の自由席と指定席の
金額の差がその30Rsに相当するんじゃないだろうか。
 
コロンボに近くなった頃
いかついルックスの検札係員が2人組で現れた。
 
僕の隣に座って本を読んでいた男の切符が
3等車の切符だったことが発覚した。
男は検札から「罰金として300Rs払え」と追求されている。
 
その男は、僕が連れだからこいつが払う、と言っているようだ。
男が「300Rs払ってくれよ」と僕に言う。
「え?」
僕は予想もしない事態にきょとんとしていた。
「300Rs払えよ!」
「なんで?」
「友達だろ」
「知らねえよ」
 
まわりの人が「このネパール人は無関係だ」と
検札に言ってくれたので助かった。
 
同じ車両でもう一人、不正乗車がばれて
300Rsを払えない、その二人の男たちはどこかへ連れ去られた。
 
なかなか厳しいね。
インドでもこれくらい厳しく取り締まって欲しいものだ。
 
しかし、捕まった2人は財布をひっくり返しても
300Rs(420円)を持っていなかったのだよ。
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巨大なヒルトンホテルが見えて、列車はスピードを落とした。
じきにコロンボ・フォート駅に滑り込む。
13:40
約2時間半の楽しい列車の旅だった。
 
ネゴンボに向かう
鉄道のネゴンボ行きは、なぜか
3等車の切符しか買えなかったのでやめる。
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3等車の切符(10Rs)
 
14:10発のエアコン無しバスに乗りこむ。
渋滞のコロンボの街を抜けてネゴンボに向かう。(70Rs)
路線バスなのに、3等車の7倍の料金だ。
 
1時間半かけてネゴンボに到着。ネゴンボは空港から10kmの町。
サンフラワービーチホテル(1700Rs=2400円)にする。
ここは安くて良いホテルだ。プールもあるしビーチも近い。
 
ぬるいシャワーで汗を流した後
プールサイドでカールスバーグ・ビアを飲む。
 
プールでは白人のオヤジと若い黒人女がいちゃついている。
ビキニの黒人女はスタイルも良く美人だ。
マットに体を浮かべてオシリをプリンプリンさせている。
女は黒人だが小柄なのでフランス人だ。
(おいおい・・決めつけるなよ)
スリランカ人の若者3人組みは
プールでバチャバチャ遊んでいるふりをして
そのオシリをジロジロ見ている。
 
ビーチを見に行く。
どこまでも続くロングビーチだが、残念ながらゴミが多い。
 
子供がいっぱいいる。
ビーチバレーとサッカーが盛んなようだ。
ビーチバレーはワン、ツー、アタックではなく一打で返す。
見ていてまったく面白くない。
子供たちから「ペンをくれよ。」と声をかけられるが、あげない。
 
カリー屋を捜しているとオッサンに呼びとめられる。
「おい、中国人、中華料理屋ならそこにあるぞ。」
いや、僕はカリー屋を捜しているんだよ。
ひげボーボーになって、日焼けしてきたので
日本人には見られなくなってきたようだ。
 
スリランカの旅はもう終わりに近づいている。
バンコク行きの飛行機は今日の深夜2:15なのだ。
 
教会から賛美歌が聞こえてきた。
礼拝が行われていたので、僕もお邪魔して祈ることにする。
 
神様、無事に旅をさせていただき、ありがとうございました。
バンコク行きの飛行機では隣の席に
ワキガ臭いスリランカ人が乗ってこないようにお願いします。
かわりに日本人のカワイコチャンが来ますように・・・
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(おしまい)